二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【VOCALOID】×【イナズマイレブン】 ( No.72 )
日時: 2010/06/15 17:57
名前: 空紅 ◆.cU92yuIQo (ID: eEFm9oln)

いくつもの月が過ぎて、いくつもの日が過ぎて。
やっと風丸のまわりに人が帰ってきました。

———でも、それは純真無垢な“子供”ではありませんでした。
風丸を利用しようと考える、“大人”。

現国王は、そこそこ人気もありました。
でも、それも過去の話。
今は、独裁政治を行う国王を、だれもが嫌っていたのです。

大人たちは、風丸に国王になれと言いました。
おまえなら出来るから、と。

風丸は願いを聞き入れ、国王を倒し———。

王子となったのです。

「ふぅ……。」

王室の自分の部屋の前で、風丸はためいきをつきます。

(円堂。みんな。)

帰りたい、帰りたい、帰りたい。
その思いで胸はいっぱいです。

———そのとき。
自分しか居ないはずの部屋に、声が響きました。

「なにをしているのですか———?こんなところで。」
「忘れたの?あなたは、“アリス”。」

綺麗な二重奏。
忘れもしない、“夢”の声。

“夢”のふたりは、哀しそうにこちらを見つめていました。

「な……。」
「アリスであったはずなのに。これまでで、」
「ずっとアリスに近かったのに。」

哀しそうな二重奏は続きます。
風丸は、瞳を見開いてその場に立っていました。

その紅い瞳には、“恐怖”と“後悔”が映っていました。

「ふたつの“夢”を裏切ったあなたには、」
「ふたつの“罰”を与えよう。」

“夢”の二重奏は、どんどん高く恐ろしくなっていきます。

「ルカという“夢”からは歪な魂を。」

そういって指を鳴らすルカ———いえ、“夢”。
そのとたん、風丸のまわりになにかが現れました。

『見てみたかったよ、王子。』
『ふふふ……わたしは魂さ。戻ってこれて嬉しいよ。』
「!」

風丸を尻目に、魂は飛び回ります。

「ミクという“夢”からは不治の病を。」

そう言ってミクは風丸を指差します。
そのとたん、風丸は床に崩れ落ちました。

「ゲホッ、コホッ……。ゴホゴホッ!」

白い床に、絨毯に、真っ赤な血が飛び散ります。
そんな風丸を、“夢”は冷たく見つめていました。

『サヨウナラ、三番目アリス。』
「待っ……て。」

手を伸ばした風丸の声で、“夢”は振り返りました。

「ご、めん。」

風丸の精一杯の言葉に、“夢”は少しだけ表情を動かしました。
少しだけ、哀しそうに。

「あなたは、“希望”を持てていた。」
「ただ、“切り捨てるチカラ”が無かった。」

『サヨウナラ……。“人望”の三番目アリス。』


風丸の後悔の言葉は、
          もはや“夢”には聞こえない。