二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【VOCALOID】×【イナズマイレブン】 ( No.77 )
- 日時: 2010/06/18 16:15
- 名前: *yuki* (ID: yjS9W/Zh)
- 参照: 疲れたよ 期末テストは6.22日
*〜*〜四番目〜*〜*
「兄貴、おい、兄貴!!」
「…………ん」
薄暗い森の中に、二人の男の子———、吹雪士郎とその弟、アツヤは居ました。
士郎はアツヤに体をゆすられ、ゆっくりと眼をあけて。
「?!!」
素早く……本能的にでしょうか、飛びのきました。
そのなにかから離れない青い瞳には、
——茶髪の女の人が、映っていました。
けれど、なぜそんなに驚くのか?
……それは、彼女に、黒ずんだ、紅い“ナニカ”が、たくさんついていたからです。
いいえ、士朗はそのナニカの正体など、わかっていました。
でも、理解してしまったら、———
自分達が、どうなってしまうか…………
「おい兄貴!」
「!……」
……考えの邪魔をされた?いいえ、それは幸運。
突然のアツヤの大声に思考が中断されたのは。
自分達に襲いかかる“恐怖”を、知るのを少し遅くすることができたのですから。
「どうしたんだよ、そんなビクついた顔して……」
アツヤは不思議そうに、しかし危機感は感じられない表情で言いました。
そう、アツヤはなにも知らないのです。
わからないのです。
自分の背後にダレがいるか。
いえ、ナニがあるのか。
そして、士朗は答えることができずに、ただただ、向こうを指差します。
そのひどく震える指の先を見たアツヤは。
顔色を一瞬で変え、士朗を守るように、彼の前に立ち。
「うふふ……どうしたの?ねえ。
その子をかばうようにするってことは、私を危険人物だと、認識したってことかしら?」
すると、わずかに笑みを浮かべながら、女性は、二人に近づいていきます。
でも、本当に“ヒト”なのでしょうか?
その瞳に光はなく、
ずっとどこかをさまよっているようなのです。
「ふざ……けるな、お前は誰なんだよ!!答えろ!!」
アツヤはいつのまにか、士朗の手をギュッとつかんでいました。
それは、士朗の震えを無くすため?
いいえ、それは自分を落ちつかせるため。
「そんなに怯えなくたっていいのよ。
ここは不思議の国なんだから。
一つ目の、“力”の不思議の国。
私は、————メイコ。」
女の口から、途中までは軽快に紡がれていたその言葉は、急に哀しげになりました。
でも、その表情は一瞬のもので。
「いいえ、私は夢よ。“夢”。
メイコなんて、違う。あれは過去の名。
アリスになることができなかった、憐れな存在。
今の私は、夢なのよ。」
“夢”と名乗る女性。
彼女はそのメイコという名が、嫌いなのでしょうか、壊れた人形のように首を振り続けています。
「夢だから。私は夢だから————。
…………ああ、なのに、なぜ、まだ消えないの?!!」
メイコはピタリ、と止まり、こっちを見ました。
その瞳には、さっきとは違い、“光”が、ありました。
でも、ただの光ではないのです。
それは、“野望”————?
「消えない、消えない。
見えるの。
視えるの。
聞こえるの。
聴こえるの。
おいしそうな血が。
それが流れる音が。
私に、呼びかけてくるの。」
メイコは、ふら、ふら、と、無意識——?
なのでしょうか、士朗たちに近寄ってきます。
アツヤの、手の力が強くなります。
「捨てなきゃ、いけないのに……。
この欲望は、捨てなきゃいけないのに……。」
そう呟きながら、メイコが、ドン、と木にぶつかると、
「!?」
紅い葉っぱで隠れていた、檻のようなものが現れました。
その中に入っているのは、
死体。
そしてこれまた黒ずんでいるサッカーボール。
それを見ると、士朗たちはなぜか、吸い寄せられるかのように、檻に近付いていきました。
その姿を見たメイコは、二人の背後に忍び寄ります。
「ちょうだい、ちょうだい、
貴方達の血を!」
けれど二人は、なにを夢中になっているのか、気づきません。
そして————、
「私に!!
ちょうだい!!!」
そう、狂った叫びを森中に響きわたらせながら、
メイコは持っていた剣で、二人の背中を、
「…………!??」
切り裂くことは、できませんでした。
「……あ、ああ、あ……」
メイコはよろよろと地面に座り込みます。
なにもかもを失った瞳を、瞬き一つせずに。
「ゴメンナサイ、ゴメンナサイゴメンナサイ……」
誰に謝っているのでしょうか。
メイコはその言葉を言い続けます。
「いや……、いや、ちゃんとやれる!
だからヤメテ、嫌、イヤ、死にたくない、シニタクナイ!キエタクナイ!!」
必死そうに叫ぶメイコ。
そんなメイコの様子を、二人はとまどいながら見ていました。
そうです、二人はなにもしていないのです。
急に、剣が襲いかかってきたと思ったら、
メイコが弾き飛ばされ、
そして、必死になにかを訴えている。
まったく不思議な光景でした。
「あああ、ああ……」
メイコは汗ばんだ手で頭をおさえ、苦しそうに顔を歪ませます。
「あぁ……
ああぁぁあああぁぁぁああああ!!!!!」
……その叫び声が聞こえたかと思うと、
メイコの姿は消えていました。
二人は不安そうに顔を見合わせて、うなずきます。
メイコがいた場所に、残っていた剣。
それにそろそろと近づいて、さわると————
二人の姿も、消えてしまいました。