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「バノ？」

　バノが顔を上げた。彼の目の前にはノートパソコンがある。
　エルバがコンピューター室に入ってきた。

「ん〜？　どしたんエルバ」
「…何してるの？」

　バノはパソコンの画面を親指で示した。

「オレはチャットで変な事起こってる場所を探してるんさ。オレのご先祖さまが消えるとなっちゃな」
「バノもカーンさんの話聞いたんだ」
「先に廊下でて、カーンに会って聞いた」

　バノはパソコンに顔を戻した。
　エルバも画面を覗きこんだ。
　画面では、たくさんのハンドルネームの人たちが文字で会話していた。
　バノはどの名前？　とエルバが聞くと、バノはマイケルさと答えた。

「…お、それっぽいコメきた！」

　エルバは新たな更新に目を移した。

ケルベロス＞そういやぁ、北海道に居たはずの人間が東京まで数分で来たなんてのあったよｗｗｗ

「これ？」
「らしいな。もうちっと聞きだしてみるか」

　バノが目に見えるか見えないかの速度でキーボードを全ての指で叩いた。

マイケル＞えぇまじｗｗそれって北海道だからかねｗ
ケルベロス＞ちがくねｗ
マナ＞ほっかいどーｗｗ
近藤＞北海道→沖縄なら掲示板で見たｗｗ

「…決まりさ」
「でも、学校から出ちゃダメじゃない？」
「だーいじょうぶだろ。マ〇ケルのＤＶＤ買うついでに秘密で探してくる」

　バノはそろそろ退出とうってからインターネットを閉じ、シャットダウンした。

「明日出るさ」
「…言えばいいのに、カーンさんに」
「絶対了解くれないさ、こんな確信のないこと。誰にも言わんでな？」

　コンピューター室の外で、二人の会話を聞いている一つの影があることを、二人は知らなかった。