二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D,グレイマンⅡ 数百年後の終焉再来オリキャラ募集 ( No.54 )
日時: 2010/06/20 10:04
名前: 亜倉歌樹 (ID: lOah4y4E)

 エルバとワイサは神田たちを放っておき、スペイン広場に到着した。
 噴水が湧き、草木が生い茂る美しいところだったが、人は全くいなかった。

「なんで人がいないんですか?」

 エルバはワイサに問いかけた。

「人間見栄を張っていても、怖いものは本能的に怖いんだ。本来の花と違う育ち方の物があったらどう思う?
怖いと思うだろう?」
「確かに、何か取り憑いている——!?」

 エルバは絶句した。それよりも前にワイサは苦笑いしながら脂汗をかいていた。

「これはこれは、おっきくなってるな…」
「…っ」

 二人の目の前には、エルバたちを今にも飲み込もうとしているような薔薇が茂っていた。

「…さっそく切ってみるか…っと」

 ワイサはショルダーバッグからガーデニング用のハサミを取り出し、根元の茎を切り落とした。
 切ったところから上の方を地面に落とし、しゃがんで様子を見る。エルバもしゃがんだ。
 そのとき。

「うお…!」
「これは…!?」

 薔薇は切れたところから再生し、枝になり、葉がうまれ、つぼみがつき、可憐な花が咲いた。
そして、元の波のようなものになった。

「ただのハサミじゃ切れないか。エルバ君。君の武器で切断できるかい?」
「わ、わかりました」

 エルバは手袋をはずした。
 中から血のように紅い手と、十字架が出てきた。

『イノセンス、発動!』

 左腕は大きな白い爪になった。そのまま振りかぶり、薔薇を切ろうとした。
 …が、できなかった。

 ギイイィン!!!

「な…!?」

 エルバは尻もちをついた。
 薔薇はエルバの爪に対抗するかのように、巻きついている。

「神を拒絶する薔薇…か」

 エルバはボソリと呟いた。

「あなたたち! この薔薇に何かしたのですか!?」

 不意に、透き通って凛とした声がした。
 二人が振り返ると、ゆったりとした服を着た、茶髪の若い女性がいた。ワイサが答えた。

「いや、この花が気味が悪いという苦情が来たので…」
「く、じょう…ですって…?」

 女性は震えていた。

「この薔薇は神の薔薇です! 排除すれば神の天罰がくだりますよ!」
「…いいえ、天罰が来ることはありませんよ」

 否定をしたのは、エルバだった。

「言いがかりをおよしなさい! 貴方がたは罪を犯したんですよ!」
「僕らは確かに、『貴方にとって』罪人かもしれませんが、僕らはエクソシスト。神の使徒です」
「神の使徒…?」

 女性は眉をひそめた。

「何の根拠をもとに…?」
「これですよ」

 エルバは十字架の左腕を見せた。まだ発動を解いていない。

「…!?」

 女性は目を見開いた。それでもなんとか冷静を保つと、少し穏やかな顔になった。

「…わかりました。神の使徒を認めます。しかし、この薔薇を切り落とすことをしたら、私は貴方方を…」
「僕らを?」
「貴方…方を…!」

 それから先、彼女は言葉がつまったまま俯いてしまった。エルバはそれを見て、微笑みながらこえをかけた。

「この薔薇に、どんな思い入れがあるか、教えてくれません?」

 女性はゆっくり頷いた。