二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D,グレイマンⅡ 数百年後の終焉再来オリキャラ募集 ( No.70 )
日時: 2010/06/25 19:16
名前: 亜倉歌樹 (ID: EE/vzbC4)

 番外D灰 消えた弟

 僕は、エルバ・ウォーカー。
 今は草むらで寝っ転がっている。
 お父さんとお母さんは、僕と弟をイギリスの孤児院に預け、消えてしまった。
 それでも、僕らの苗字がウォーカーなのは、お父さんが特別な手続きをしてくれたからだと、シスターは言った。

「にいちゃん? 寝てる?」

 声が聞こえた。僕の弟、リオンだ。

「ううん、寝てないよ。空を見てたんだ」
「おそら?」
「うん。今日は全然雲がなくて、そのまま空に顔をうずめたいなって思ってたんだ」
「うずめられるの?」
「いいや、本当はうずめられないよ。そう思っただけだよ」
「ふーん」

 他愛もない会話を交わすと、リオンは僕の横に座った。
 リオンは、僕との年が3つ離れている。
 金髪で癖っ毛のある髪と、緑色の大きな目は、彼が同じ孤児院の子供たちに自慢できるものだった。
 一方僕は、なぜかおじいちゃんのような白い髪に、色のない目の色、赤い傷のある目は開かない。
 お母さんに聞いて、生まれた時からそうだったと言っていたのを覚えている。
 そして、血で色をつけたような左腕。普段はワイシャツに隠している。
 あまりに似ていないせいで、「おまえらは兄弟じゃない」と言われたこともある。

 ある日だった。
 孤児院にお父さんが来た。
 最後に見たお父さんよりも、少しやつれて見えた。

「パパだ!」

 リオンはお父さんの顔を見た瞬間、顔を輝かせて走っていく。
 リオンはお父さんに思いっきり抱きついた。お父さんはまるで、何が起きたか分からないと言った顔をした。

「パパ! 僕たちパパと一緒におうち帰れるんだね? ママは? 一緒に来たの?」

 お父さんはゆっくりとリオンを見下ろす。まるで、リオンに初めて会ったかのように。


 僕は見えた。
 泣いている、『お母さん』が。


「イノセンスハ、ドコダ…?」
「え?」

 お父さんが、『破れた』。
 中からよくわからない、怖いものが出てきた。

「パ、パ?」

 シスターが絶句する中、僕はあることに気づいた。
 リオンがまだ、怖いものの近くにいる。
 怖いものは、きっと危ないものだ。

「リオン!! 逃げて!!」

 僕は叫びながら彼の元に走る。
 怖いものは表面からパイプみたいなものをたくさん出していた。
 リオンは僕に振り向いていて、それに気づかない。
 そして——。

 たくさん何かが爆発したような音が響いた。

「にいちゃん!? にいちゃん!!」

 気がつくと、僕はリオンに覆いかぶさるように抱いていた。
 体中が、熱い。
 腕を見ると、赤い星のマークがたくさん浮き上がっている。それはどんどん広がる。

「にいちゃあぁん。ああぁああん」
「泣くな、よ? リオン、も…男の子、だろ?」

 リオンの後ろに、さっきの怖いものがあった。

「やめろおぉぉぉぉ!」

 僕は思いっきり叫んだ。
 左腕が、おかしな感覚になって、怖いものの方に、左腕が向いた。
 白くて大きくて、怖いものにぶつかった瞬間、怖いものは爆発した。

「…?」

 体の熱さが消えていて、よくみると、腕の星が消えていた。左腕も元に戻っていた。
 怖いものが壊れて、中から人みたいなものが出てきた。
 お母さんだった。

『ありがとう。お母さんは、本当のお父さんのいる、お空に行ってくるからね』
「お母…さん?」

 お母さんが、空に飛んで行ったような気がした。

「リオン?」

 手に、リオンの温もりがなかった。
 ばっと起き上がって、周りを見渡した。

「リオン? …リオン、リオン! リオン!?」

 泣いていた。泣いてしまっていた。

 そうして、僕の弟は消えた。


 そして現在。
 僕は消えた弟、リオンを探して、寄生型エクソシストになった。