二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 《銀魂》 凛 と し て 咲 く 花 の 如 く ( No.407 )
日時: 2010/10/18 22:39
名前: 月兎 (ID: dD1ACbVH)

第三十一訓「さようならは簡単に口にできる時とそうでない時がある」


「万事屋さん」
後ろから声をかけられる。
万事屋一向が声の方向を振り返ると、そこにはニコニコと満面の笑顔をした雪揺義がいた。

「おう、お兄様。どうしたよ」
銀時は姿を確認すると声をかける。
「いえいえ、お礼に来ただけですよ。いろいろご迷惑かけましたし」

「まぁまぁ、そこらに座って」
神凛は道にありもしない椅子を思い浮かべるようにして持て成される。
いや、お前の家じゃないんだけどね。

「ご丁寧にありがとうございます」
雪揺義は塀に腰をかけた。

「乗らなくていいんですよ、雪揺義さん」
呆れたように新八はつっこんでから銀時や神楽達が座ったのを見て隣に腰をかける。
「雪揺義、聞きたいことがあるネ」

「それ聞くの二回目ですね」
微笑んで言うと神楽の言葉に耳を傾ける。
「妖視族って何アルか?」
新八が椿幸の言葉に対峙している時に訪ねたこと。

「そ、ですね…話していませんでしたね。妖視族はもう太古に滅びたと言われた種族で、僕達がその生き残りなんです。見た目はそう人間と変わらないからばれる事も無かった、椿幸は千里眼を持っていたらしいです。僕達は光と闇を見ることのできる妖眼を持ってる。」

「雪羽氷のだな」
銀時が頷く。

「そうです、雪羽氷だけは特別だった、どちらも持っていたんです」
光と闇のどちらも、見ることが出来た。
「お前は?」
神凛が問う、すると雪揺義は右目を指さしてから後ろを向いてもう一度振り向いた。

「あ」

黒眼だった雪揺義の右目は黄色に変わっていた。
「これで分かりますか?光ですよ」

なんで隠しているのか?
そう聞こうとして、誰もが口を閉じた。

兄だと、妖視族だとばれないように、だろう。
「なんで兄だって、言わないんだ?」

銀時の言葉に少し哀しそうに、でもやはり笑って雪揺義は立ち上がった。

「もう、雪羽氷の兄は死んでるんですよ…8年前に」

今、18歳の雪揺義と13歳の雪羽氷。
8年前は10歳と5歳、ちょうど5歳歳の離れた兄弟だった。
「死んだ…?」

「そうです、椿幸に殺された。という事になってるんですよ」
殺された、殺したという事になっている人の部下になっていたということ。

「   」
沈黙。

それを破るようにしてニコニコとしながら言う。
「種族同士の争いで、ですが。ですが僕は殺されずに匿われ、後に種族同士の争いで負けた雪羽氷は椿幸によって屋敷に連れてこられた。そして再会、というわけです」

腕時計を確認すると、振り返る。
言葉を待たずとして雪揺義は淡々と話した。

「もうそろそろ、行かないとですね」

「何処に行くんですか?」
新八も立ち上がり、無い時計を探した。
「自由になる為の旅、ですかね」

それは雪羽氷と、ともに。
笑顔が其れを現していた。
「そうか、ここでさよならだな」
銀時は手をひらひらと振る。



「本当に、ありがとうございました。



また。何処かで会いましょう、絶対に」

万事屋一行はそう言って、腰を曲げるとさようならと口にしてから彼等に背を向けた。