二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 《銀魂》凛 と し て 咲 く 花 の 如 く ( No.523 )
- 日時: 2010/11/19 19:31
- 名前: 月兎 (ID: kDmOxrMt)
第三十八訓「手に入らないものほどほしくなる」
小雨、朝から降り始めたその雨を傘で凌ぎながら神楽はずっとそこに張り付いていた。
ガラスへへばりついて、傘もほとんど意味を成していない。
「欲しいアルゥゥゥゥ」
そう言いながら神楽は猫の顔の形をしたガマ口の小銭入れを開く。
器を作った手に落ちてきたのは十円玉とゴミ。
「いち、に…三十円しかないヨ」
手にかかった酢昆布を見て、後悔したように溜息をついた。
「無理アル」
そうして神楽はそこを肩を落として後にした。
そんな光景を自動販売機の上で傘を指して見ていた人物。
いつも自動販売機にいる?
「そんなに欲しいものあんのか?」
そう、神凛だった。
傘でふさがった右手と左で持つのは自分の座る自動販売機で勝ったであろうモノが握られている。
「うめェ」
おしるこを飲み干すと神凛は自動販売機から飛び降りた。
高い音が鳴り、おしるこの缶がゴミ箱に入っていく。
傘を回しながら先程神楽がいたところへ向かう。
「アイツが欲しいものってなーんだ」
どうせ、食べ物だろ。
神凛は内心にそう確信しながらもガラスのショーケースの中を覗いた。
「ん」
そこには手前に、綺麗な紅と黒の色が使われた和傘が飾られていた。
「アイツこれほしいわけ?」
「…」
苦笑しながら、神凛は傘の近くに張られた値札を見て、そして目を見開いた。
「二千円…?」
あまり高くないことに少々の驚き。
「なんだ、あんまり高くないけど…」
先程の神楽の堕ち込み様と、三十円という所持金を思い出した。
「高いか」
アイツにとっちゃ。そう続けて、自分もコートの内ポケットから巾着を取りだした。
中から出てきたのは一枚と二枚。
「千円と百円…」
千円札一枚と五十円玉が二つ出て来て、神凛は傘にもう一度目を向けた。
そして、一言。
『…後、九百円か』
手のひらに乗った全財産を握りしめた。
「何日で貯まるかねぇ」
既に小雨は止み、傘の必要性はなくなっていた。
もちろん。
神凛はさしたままで止んだことにも気づいていないようだが。
神楽がはりついて、神凛がやってきたその店。
その店は傘屋ではなく多くの商品が飾られており、神楽が傘目当てかどうかはわからなかった。
『あァァァァァ!!!』
その中で一番大きく、眼に入ったものが和傘だった。
…のだが。
その、傘の少し後ろの値札に数字が並んでいる。
0が4つ。
その手に届く筈もない金額の商品、それが。
『ビッグ酢昆布欲しかったアルゥゥゥゥ!!!』
通常の酢昆布の3倍の大きさがあるだろう箱が傘のすぐ後ろに飾られていた。
だが、そんなことに神凛が気付いている筈もなく…。
「銀時!なんか仕事きてない?」
「九百円必要なんだけど!」
満面の笑みでそう言っていたわけで。