二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 《銀魂》凛 と し て 咲 く 花 の 如 く ( No.730 )
日時: 2011/04/24 18:01
名前: 月兎 (ID: luklZ16E)

第四十七訓「待ち伏せとか反則だろ、まじで」


「…」

沈黙、暗い部屋に重い空気が流れていた。

「…」
「何デ、黙ってるのかナ?」
髑髏は目の前でだんまりを決め込んだ相手に笑顔で問う。
場所は薄暗い倉庫の中。

「神凛」

髑髏は目の前の相手の名前を呼ぶ。
すると、神凛は溜息をついてゆっくりと口を開いた。
「ねぇ、髑髏ちゃんだっけ?テメー私のこと忘れてただろ」

不機嫌だと言わんばかりの形相の神凛に対し、もちろん髑髏は笑顔を崩さずにケラケラと笑い始める。

「そんなことないヨ、ただあの時ハあまりにも別人みたいだったからネ…」
驚いちゃったヨ。

埃の募る倉庫内で二人は向かい合わせに立ちつくしたまま、口だけを動かしているのだった。

神凛は目を細めて、声音を低くして髑髏に言葉をぶつけた。
「どういうことだ」

「どういうこと?どうもこうもないでショ?」
軽快に髑髏は喋り、倉庫に置いてあった古い椅子に手を掛けた。


「滅ぼされたッテ言われてる月兎族ノ生き残り、ついでに言うト…


      《過激攘夷浪士集団、月光隊の元隊長》


…デあってるかナ?」

神凛は予想していたのか、表情を変えず髑髏を見る。
髑髏はその神凛を見て、また愉快そうに歯を見せた。

《月光隊》
髑髏が口にしたその言葉は、攘夷浪士の間では有名な名だった。
過激攘夷浪士と言われ有名な《鬼兵隊》と並び、過激な活動を行っている集団だ。

恐れられ、憎まれ、そして一部のものに崇められる…
そんな集団の元隊長が神凛だと、髑髏は言ったのだ。


神凛が口を開くその前に、髑髏は付け足すかのように。
わざとらしく思い出したかのように声をあげて、言葉を続けた。

「あ、僕間違えたネ。元なんかじゃなかっタ、今も昔も月光隊ノ隊長…これデ文句ないでショ?」
「…」
「復讐する者ハ、いずれ復讐される側ニ変わるんだヨ」
「…テメー」

「僕モ、嘘つきだからネ。一緒、僕と神凛ハ」



重い、埃の積もった扉が閉まる音が聞こえたのはそのすぐ後だった。

分担して掃除をするということで、倉庫にやってきた私を待っていたのはあの時髑髏と名乗った、夜兎族の女だった。
傘をブンブン振り回して、一人でニコニコしながら私の姿を確認するなり嬉しそうに話しかけてきた。

『遅かったネ、君たちの方ガ先に行ったのニ』

そんな事を言って私の言葉を待っているのか首を捻った。
私を見つめるその瞳と、醸し出す雰囲気と、少しヘラっと笑うその顔が誰かに似ていた。

でもそれが誰かは思い出せなかった。

それをどうにか思い出そうとして考えていたらいつの間にか黙っていて、違う事を思い出した。
髑髏が神楽達の名前を指さして読んだ時に、私の名前だけなかったことに。


「何だったんだよ、一体」
訳が分からない、突然何を言い出すのかと思ったら、あんな事を言ってくるだなんて。

「アイツと、私が一緒…?」
アイツは一体何なのか、全く分からない。
だけどそれよりも、自分の事を知られているのことに驚いた。
あの時は表情には出なかったけれど…



「何かある、アイツも。それにこの仕事も、絶対に怪しすぎる」

私はこの時、やっとこの色家の他ならぬ空気に気付いたのだった。