二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〔銀魂〕凛 と し て 咲 く 花 の 如 く ( No.766 )
- 日時: 2011/10/17 18:03
- 名前: 月兎 (ID: luklZ16E)
第五十訓「人には忘れられない過去がある」
少女は夢を見ていた。
それはとても昔の話で、思い出そうとしてもすぐに消えていってしまうような。
そんな儚い夢だった。
『大丈夫、知ってるかい?私ほど偉くなってしまうとね、当たり前になってしまうんだよ』
そう言って知らない男の人は笑っていた。
『私の友人も、そのまた友人も、みんな同じなんだよ。君と同じような子がたくさんいるんだ』
私は怯えていたのか、何も感じなかったのか。
その時私は自分の置かれている状況が、確かに(幸せ)であると感じていた。
『捨てられると死ぬんじゃないの?』
『いや、そんなことはない。君は捨てられたんじゃなくて私たちに買われたんだ。そう、君は死ぬんじゃなくて生きるんだよ、これから』
そんな言葉が私にとってはこれといってないほどに温かく、生きていこうとそう思った。
それが、この世界の決まりに反していたとしても。
これが、人身売買であったとしても。
少女が振り返ったとき、夢は儚くも覚めてしまった。
薄暗い部屋、肩に毛布を掛け椅子に座る白菜がいた。
「…ふふ」
一人、自室で白菜は目じりに涙をつけながらも微笑む。
それは彼女にとってのすべての歴史で、(色 白菜)の始まった日の思い出だった。
彼女は座っていた椅子から腰を上げて呟く。
「これはきっと終わりになるでしょうね」
彼女は時間を確認すると自室の扉を閉めた。
そして場所は移る。
「あー、見ちゃだめだったよねこれは」
神凛が一人、一枚の紙を手に取り真剣な顔つきで言った。
「真選組が来た理由ってこれだよね」
紙には、何らかの同意書らしく項目や質問とともに長々とした文が印刷されていた。
そして右下に押されているのは、色と書かれた赤い判子であることに間違いはなかった。
『売却志願書』
そう書かれた紙は神凛の服の中にしまわれていく。
「夕食で発表するにはまずいよね」
「でも真選組の奴らに言うのもアレだし…」
「まずは銀時たちに見せるか」
ため息をついて一歩歩みだしたとき、もう一度紙を取り出して呟いた。
「これ、渡したらどうなるのかな」
神凛はまだ気づいてはいなかった。
色家一連の事件を。
だがそれは言うまでもなく真実に近いものであることに間違いはなかったわけだ。
「うん、行くかー」
戸を開き、また一人部屋を後にした。
時刻は7時。
神凛がいなくなった部屋は多くの書類と、豪華絢爛な家具が並んでいる。
そこは、白菜達の父である色いろりの自室だった。
それから少し経った頃、台所から元気な声が響いた。
『夕食できたよー!!』