二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 唄い鳥 〜桜蘭高校ホスト部〜 ( No.11 )
日時: 2010/06/16 17:02
名前: さくら (ID: 50PasCpc)

タタタタタ…



「………」


南校舎の最上階へ上がる。



「次は…………」



サクラはピタリと立ち止まる。

(南校舎の最上階………)




「あれ…?」

(…北校舎だっけ……??)



ここは南校舎の最上階。
北側廊下のつきあたりへ行くだけな筈なのに、彼女は第三音楽室までの道のりを忘れてしまっていた。


(えーと…どこだっけ……北…北……北ー………??)

北側廊下がどうしても出てこない。階段のすぐ上でぼーっとしていると、

「北側階段だ!!」

間違った答えを作り出し、足を踏み出そうとした。


「痛…っわ……!」

中途半端に階段に上げた足を捻り、階段へ真っ逆さま。


スローモーションで今まで自分がいた階段上を眺める。



(ごめんなさい、藤岡さん…あなたにちゃんと辞書返したかったけど、わたしこのままじゃ頭を打って死んじゃう…!!)


天井を見つめながら、サクラはハルヒに詫びる。
辞書を持つ手の力が弛んで、つい辞書を手放してしまった。


(ああ…ごめんなさい、藤岡さん。あなたに借りた辞書なのに、放り投げてしまいました…)


ハルヒの笑顔が天井に浮かんで消えた。
…ような気がした。

涙がぶわっと溢れてきて、思わず目を瞑った。


(もっと歌うたえば良かった…っ)
「危ない!!崇っ!!」

誰かの声がしたかと思うと、背中に強い衝撃。それと同時に体を包まれる。

「…大丈夫か?」

後ろから低い男の人の声。
床についている足。
立ったまま、誰かに背中を預けていることがわかる。

「大丈夫ー??」

子供の声が聞こえて、ギョッとして振り返る。


高い身長の主の顔を見ると、無表情だった。そのわりに綺麗な顔立ちで、つい見入ってしまっていると

「大丈夫ー??どこか痛いのー??」

肩からひょっこり現れた男の子の姿に驚いて、しりもちをつく。
この体勢だと男の身長が際立って、かなりの大男に見える。
つい体を縮込ませてしまう。


「僕、3-Aの埴之塚光邦!!こっちは銛之塚崇!!君は??」

「い、1-Aの高村サクラ…です…」








(この二人同い年なんだ…)

小学生にしか見えないこの少年を見ながらサクラはそう述べた。


「そんな所に座っていたら、体が冷える」

崇が手を差し出すと、「す…すみません…」と言いながら手を重ねた。

「ここに何か用事があったの??」

「あ!辞書を返したくて…」

慌てて辞書を探すと、光邦が「はい」と辞書を差し出してくれた。

「ありがとうございます」

「良かったら一緒にケーキ食べようよ!!」

「……へ??ケーキ…??」

突然のお誘いに驚きつつも、自分にはハルヒに辞書を返すという使命があるのだ。

「すみません、すぐ返しに行きたいので…」

「ちょーっとだけ遊んで、すぐ帰ったらいいんだよ!!ねっ??」

う…、とサクラは困り顔をする。
(か…可愛い…!!…この人ほんとに3年生なのかな…??)

そんなことを思っていると、光邦は崇に優しく叱られていた。


「あまりしつこくするな。困っている」

「うん…ごめんね…」


うるうるした瞳で見つめられ、サクラの決意が揺らぐ。

(助けてもらったのに泣かせるなんて…)

サクラの胸が痛む。


「ほ、ほんとに少しなら……」

「ほんとう!!?じゃあ行こーっ!!」


花をぱやぱやと飛ばしながら、光邦はサクラの左手を握って歩き出す。


「崇はサクちゃんの右手だよっ」

「わかった」


左手に光邦。右手に崇。両手に美男子。

なんとも不思議な光景だと思いながら、光邦に引かれて足を進めた。


その先は、
第三音楽室。