二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 鋼の錬金術師〜約束の月光〜 ( No.24 )
日時: 2010/06/28 22:07
名前: 皇林 (ID: HZjgBtCK)

 その刹那、レバーが下がる音がした。そして、闇の中から2つの赤い点がマリー達に向かってくる。はっきりと姿が見えた時、マリーは思わず手を合わせていた。エドワード、アルフォンス、そしてマリーの目の前に現れたのは、動物と動物を合成させてできた合成獣<キメラ>と呼ばれる存在の物だった。


「合成獣を見るのは初めてかね? 賢者の石はこんな物も作れるのだよ」
「……賢者の石」

 エドワードが低い声で呟く。コーネロの指には血のように赤く輝く、賢者の石、と呼ばれる存在の物があった。エドワードとアルフォンスの探し物でもあり、それは“マリーの探し物でもある”。

「探したぜ……。原則などを無視して錬成が可能になる石」

 エドワードも手を合わせる。そして、エドワードとマリーは同時に合成獣に襲いかかった。マリーは手の平を合成獣の背中に合わせた。
 するとそこに錬成陣が現れた。“マリー専用”の錬成陣だ。つまり、月光の錬金術師の錬成陣。1つの錬成陣の真ん中に、三日月が描かれている。そしてマリーの首からかけてある石も輝き始めた。


「月光の錬金術……受けてみなさいよ、合成獣!」

 石の輝きが消えると、錬成陣が爆発した。合成獣は唸り声をあげるが、そのままエドワードに突進していく。そして、その右腕に噛みついた。だが、マリーは全く表情を変えなかった。そしてエドワードも余裕の表情をしている。


「どうした猫野郎。しっかり味わえよ」

 合成獣も焦っている様子だ。エドワードは鼻で笑うと、合成獣を左足で蹴りあげた。マリーに深い傷を負わされていた合成獣は、あっという間に倒れてしまった。

「く、くそっ……!」

 コーネロはそう言うと、マリー達に背を向けた。いつの間にかそこに扉がある。マリーが声を上げる間もなく、コーネロはその扉から出て行った。

「ずる賢い奴。さてと、エドワードさん、アルフォンスさん、行きましょうか」
「そうだな」

 マリー達は階段を上り、扉を開けようとする。だがマリーは不意に視線を感じてその方向を向くと、俯く
ロゼが立っていた。身体が震えている。マリーは優しく微笑むと、自分の石を握らせた。

「あったかいでしょ、これ」
「え……えぇ」

 マリーはロゼの手を包み、よりいっそう強く石を握らせた。そしてマリーはロゼの耳元で囁いた。

「……これね……私の命なんだよ」
「……え?」

 ロゼが目を丸くする中、マリーはより深く微笑むと、その赤朱色の瞳に石を映した。そして石を強く握ると、ロゼの手をつかむ。

「さ……行こうか。エドワードさん、アルフォンスさん。ロゼ」