二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 鋼の錬金術師 〜約束の月光〜 ( No.9 )
日時: 2010/06/23 16:28
名前: 皇林 (ID: hQNiL0LO)

「おぉ〜!」

 周りにいた客達が一斉に鎧の方につめよった。その鎧はあたふたしている。全員が鎧の方に詰め寄ったので、残されたのは少年とマリーだけとなった。

「あれ? あの、皆さん? 『鋼の錬金術師』はこちらですよ?」

 マリーが少年の方を指さす。客達は一旦マリー達の方を向き、もう一度鎧を見た。鎧は申し訳なさそうにしながら、少年を指さしている。客達の中から声が上がった。

「じゃああっちのちっこい方?」

 客の1人がそう言った瞬間、少年が暴れ出した。怒っているのか、青筋が立っている。マリーは苦笑しながらその光景を見ていた。そう、鋼の錬金術師、エドワード・エルリックとは、あの金髪の少年だ。
 誰が見ても、鋼に当てはまるのは鎧の方だと思うが。そしてエドワードが親指を己の方に向けながら言う。

「オ・レ・が! 鋼の錬金術師、エドワード・エルリック!」
「ボクは弟のアルフォンス・エルリックです」

 「オレが」を強調させながらエドワードが言い、ぺこぺこと頭を下げながらアルフォンスが言った。客達はエドワードの暴走に腰を抜かせながら、謝罪の一言を述べた。

「あのさ、聞きたいんだけど、レト教って何? このラジオから流れてる辛気臭い言葉……何?」
「あ、それオレも聞きたい」

 マリーが言うと、エドワードが小さく手を挙げながら言った。客達は驚いた様で、マリーとエドワードをかわるがわる見た。そして最後にアルフォンスを見る。

「コーネロ様だよ。死するものには復活を、生ける者には永遠を、ってな」
「「嘘くさぁ〜っ……」」

 マリーとエドワードの声が重なった。マリーはエドワードの方を見ると、エドワードもマリーの方を見ていた。ところで、と、アルフォンスがきりだした。

「君、錬金術知ってたけど、錬金術師なの?」
「うん、そうだよ! 一応国家錬金術師なんだけどなぁ〜……。聞いた事ない? 『月光の錬金術師』って」

 エドワードとアルフォンスは顔を見合わせ考えていたが、1人の客が叫んだ。

「知っているぞ! その首の石を見たときから薄々思っていたんだ! 月光の錬金術師、マリー・ロゼルアッ!」

 客達から興奮の声が上がり、今度はマリーに客達がつめよった。
マリーは客達から質問攻めにあっていながら、その頭はずっとレト教の事を考えていた。

 
 質問攻めが終わるとマリーは一伸びをして、地面に置いていた鞄を手に取った。緩んでいたブーツの紐を再び括り直し、カウンターの上にお金を置くと、エドワードとアルフォンスに手を振った。

「それじゃあね。エドワードさん、アルフォンスさん」
「あぁ。お互い国家錬金術師として頑張ろうぜ」
「さようなら」

 マリーは微笑みながら立ち去ろうとした時、客の1人がマリーを呼びとめた。マリーは笑顔で振り返る。

「あんた、暑くないのか? そんな服着て……」
「……寒がりな物ですからっ!」

 マリーは微笑むと、広場の方に向かって歩いて行った。