二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師〜キミとの約束〜 ( No.5 )
日時: 2010/06/29 19:19
名前: 刹那 (ID: uT.X2sVB)

第三話「安部家の女房(昌浩視点)」

「あー。あったかーい」
少年は、白い生き物を、首元に巻いていた。

季節は、1月。真冬のピーク時期だ。部屋にいても、やはり、寒い。

「おい。いい加減に、俺をまくのはやめろ」
「いいじゃん、別に〜」
「ふん。真夏は、「暑苦しいから近寄るな」って言ってるくせに」
「う・・・・。でもまぁそのときはそのとき!」
「うるさい。晴明の孫」
「孫言うな。物の怪のもっくん」
「もっくん言うな」

と、のんきな会話を続けていた。

白い生き物を、首元に巻いているのが、安部昌浩。稀代の大陰陽師、安部晴明の孫である。まだまだ、半人前の陰陽師だが、日々、修行に励んでいる。

そして、「白い生き物」は、物の怪の、通称もっくん
その姿は、小さな犬や大きな猫ほどの大きさで、全身を、真っ白な毛並みに覆われている。四肢の先に具わった五本の爪はするどく、首周りを、赤い勾玉に似た突起が一巡している。瞳は赤く、額に紅い花のような模様がある。

「昌浩。入っていい?」
「いいよ。彰子」
彰子は、静かに部屋の扉を開ける。
「あらら・・・またこんなに散らかして・・・掃除するわね」
「えっ!いいよ!」
「だめ」

結局、言い合いに負けて、彰子に、掃除をしてもらうことになった。

彰子こと、藤原彰子は、左大臣道長の一の姫。当代一の見鬼の才をもつ。わけあって、入内をとりやめ、安部家に半永久的に在住中である。

「ねぇ。昌浩。今日、新しい女房さんが来るって知ってる?」
「うん」
興味なさげに昌浩は答える。
「どんな人でしょうね」
「さあ?」
また、興味なさげに答える。
「もう・・・昌浩ったら・・・」
彰子はぷくっとふくれる。しかし、次の瞬間、微笑んだ。
「まぁ昌浩はそんなことに興味もたなそうだものね」
「まぁな」
物の怪が答えた。



「ふぇっくしょい!」
唯は、くしゃみをした。
そして、キョロキョロと周りを見回す。
「おかしいな・・・風邪なんてひいてないのに・・」


そして、明日から、唯の女房生活が始まる