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第1話【嫌いなものは】



「Momo！はやく来なさい！！本番前なのに何してるのよ！？」

『ご、ごめんなさい！今行きます！！』



がたっ、と楽屋のパイプ椅子を後方に飛ばしながら立ち上がった。
マネージャーは腕を組んで仁王立ちをしていることからかなり怒っているようだ
スタジオに着くなり、マネージャーは「遅れました」と何人ものスタッフに言い回る。
そんなに遅刻したのかと私は内心驚いた
が、しかしそんなことを考えているうちに、こそっとマネージャーが耳元でささやいた。



「もも、アナタも謝りなさい。15分も遅刻してるのよ？」

『(めんどくさいなぁ・・・・オイ)』



Momoの本当の顔が"鳴木 もも"であるということ。
そして私が

Momoとは真逆のめんどくさがり屋の無気力少女だということ

それは誰も知らない・・・・・
はずだったんだけどなぁ。







「オイテメェらあぁああ！朝っからうるせぇんだよ！！町内会の遠吠えコンテストですかコノヤロー！！」



私より先に入った先生らしき人が入るなり大声をあげた。
その先生が
「オイ、神楽。それは早弁じゃねぇ、朝食の間違いだ」
やら
「沖田ァ、そのふざけたアイマスクを今すぐとれ。寝てんのはわかってんだよ」
やらボケとツッコミの連鎖(?)をくりかえしながらやっと教室内を静かにさせた。



「入ってきていーぞ。つか、早く入ってこい」



3年z組
その教室のドアをそっとスライドした。




『・・・鳴木 もも、好きなものは特にありません。嫌いなものは勉強と会話です』




我ながらえらく暗い転校生役だ。