二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】太陽と、 ( No.9 )
- 日時: 2010/07/04 22:07
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: Dqv4019I)
- 参照: そう人は真実には届きにくい
▼story05 「君からの贈り物」
僕は眩しいのを堪えて空を仰いだ。
空を仰いで先ず気付いたのが、青空を遮って通る空飛ぶ船。
次に気になったのが建物。
常に所々に明りの付いていた、ビル等を見る影もない。
其れ等の代わりに高層化しつつも瓦屋根だけは譲らない和風の建物が立ち並んでいた。
此処と元居た世界は、何処か同じで同じじゃない。
似ているようで、似ていない。
「最初は何処行きたいんでィ。」
近藤さんの要望で、共に江戸を観光をしていた沖田さんの声に我に返った。
行きたい処等、此処に来たばかりの僕にはよく判らない。
「うーん。特に無いですね。」
僕等は先程行った駄菓子屋で買ったお菓子をもさもさと食べながら、のんびりと町を歩いていた。
今は行く宛も無く、取り敢えずぶらぶらしている。
「じゃあ此処行きやしょう。」
「良いですけど。此処、呉服屋?」
沖田さんが餡ドーナツを口に入れながら入ろうと行ったのは、小さいが色々な着物が揃った呉服屋だった。
其の意図は判らないが服を見るのは元々好きなので、彼に続いて店に入った。
沖田さんは入るなり、此の店のオーナーらしき人に声をかける。
「旦那ァ。」
「あ、いらっしゃい沖田さん。今日は何をお買い上げで?」
「ああ今回は俺じゃなくて、コイツの選んでやってくれ。」
沖田さんは僕を指差してそう言った。
此処沖田さんの行きつけの店なんだ。
と、察すると少しだけ「かっこいい」と思った。
「お、沖田さんが女の子連れなんて珍しいねィ。真逆沖田さんの此れかい?」
オーナーさんは小指を上げて言った。
何コイツ何か腹立つんですけど。
何でこんなに嬉しそうなんだよ。
──────────殺したくなるから、やめろよ。
(僕の中の血が騒いじゃう。)
「そうでさァ。恋人同士でィ。」
「いや、違いますからね。」
「チッ。」
「チッじゃないですよ。何嘘言ってんですか。」
僕の事で変な事を周りに振りかけられると、此方が困る。
此れでも僕等は前の世界では逃亡者な為、目立つ事は出来るだけ避けたい。
此処まで追って来る可能性も高いからだ。
兎に角、僕は目立っては駄目だった。
─────→
気を取り直して、僕は並ぶ着物を見渡した。
「うわぁ、綺麗なのばっかだ。」
「どれか気に入ったのありやしたかィ?」
「んー? 全部綺麗ですから、特に此れってのは無いです。」
沖田さんの質問にそう答えると、彼は辺りを見回した後、一枚の着物を手に取った。
「なら此れは如何ですかィ?」
「わぁ。カッコいいです。」
其れは漆黒の生地に無数の蝶が刺繍してある着物だった。
帯も深紅で、全体的にクール系な着物である。
「へぇー、沖田さんってセンス良いんですね。」
「当たり前でさァ。気に入りましたかィ?」
「はい。凄く綺麗。」
「じゃあ此れ貰いやす。」
「えっ?」
僕が頷くと沖田さんは其の着物をお店の人に渡していた。
「え!? 良いです、沖田さん」
「俺が雅焔にやりたいんでさァ。受け取ってくだせェ。」
沖田さんはそう言いながら包んでもらった着物を渡して来た。
申し訳ない気持ちはあったが、沖田さんが折角買ってくれたものなので有り難く受けとる事にした。
「有難う御座います。沖田さん。なんてお礼すれば良いか。」
「お礼ねィ。じゃあ俺の事は総悟って呼んでくだせェ。其れから敬語もなしでさァ。」
「……うん。判った。総悟。」
僕が彼の下の名前を呼んだ時の総悟の笑顔に見惚れたのは秘密。