二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】太陽と、 ( No.10 )
日時: 2010/07/04 21:13
名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: Dqv4019I)
参照: 只大切にされているのが嬉しかっただけ

▼story06 「狂い桜」

桜の淡い花弁が、風に散されて宙を舞う。
別世界に迷い込んだ様な、現実感の薄い幻想的な景色。

僕等は桜が咲き乱れた樹の梢に腰を下ろして町を見下ろしていた。
近藤さん達も朝から巡回に行っており、暇な僕等は丁度良い樹を見つけ暇を潰していた。

僕等は桜の香りを嗅ぎながら、樹に背を預け、本のページを捲る。
のんびり本を読もうと言う僕等の意気は、其の直後に破かれる。

「てめぇ等もしつけェな! しつけェ男は嫌われんだぞ!」
「しつけェのはテメーの方だろーが!! んなにしょっ引かれてェのか!?」


———────あれ、此の声聞き覚えが。


「オイオイ、職権乱用ってヤツですかコノヤロー。こんな善良な市民をしょっ引くなんざ、警察の風上にも置けねーな。」
「誰が善良な市民だ! 誰が!! テメーが善良な市民だったらな、かぶき町には悪党一匹いねぇんだよ!!」
「んだとォ、此の税金泥棒が!!」
「払ってもねェくせして、難癖つけてんじゃねェよ!!」
「払ってるよ。……時々。」
「常に払え! 常に!!」


———──────嗚呼、やっぱり。


「オイ、チャイナ。テメェはしょっ引く事なく、此処で始末してやらァ。」
「上等じゃコルァ!! おめーなんて返り討ちにしてやるネ!」
「銀さんも神楽ちゃんも、良い加減にして下さいよ。人に見られてますよ。」
「そーだぞ。トシも総悟も、其の辺にしとけ。」

今にも戦闘になりそうな一触即発の中、少し呆れ気味に言う少年の声と宥めるように言う聞き覚えのある人の声。
僕等は読み掛けの本を閉じ、舞う様な見事な動作で梢から飛び降りると、急ぎ足で其処に向かった。

「近藤さんに土方さん、総悟も何やってんですか。」

僕が呆れ声で呼びかけると、3人は一斉に僕等の方に振り向いた。
目を見開いてもの凄く驚いた顔をしていたので、僕は小さく笑ってしまった。

「お前等、勝手に屯所を離れたのか?」
「すまん。暇だったんだ。」

土方さんの質問に湟謎が答えた。
其の隣で、アハハハ。と僕が笑うと、呆れた表情をする土方さん。



「……雅焔?」



近くに居た銀髪の男が驚きながら、小さくそう呟いた。
其れを湟謎は聞き逃さなかった。


「オイ、雅焔。そんな連中と仲良くなる事なんかねェ。さっさと来い。」

少し眉を寄せ瞳孔を開き促す。
其の言葉に慌てて僕は湟謎を連れて走って戻る。
土方さんは僕の後頭部を持ち、自分の隣に並ばせ歩き出す。

「成る程〜。あの鬼の副長は、実はロリコンだったワケか。
だから俺達と仲良くなって欲しくねェんだな? いやァ、多串君も独占欲が強いねー」

其れを見た銀髪の男が、ニヤニヤしながらワザと聞こえるように言った。
其の瞬間、土方さんはピタッと足を止め、ワナワナと身体を震わせ、バッと勢い良く振り返った。

「んだと、コルァ!! 誰が、こんな餓鬼相手にすっかよ!! つーか、俺はロリコンでも多串でもねェェェェ!!!」

青筋を立て瞳孔を全開にし、力一杯シャウトした。
鬼の形相とは、こういう事を言うのだろうか。
周りにいた野次馬達が、其の顔を見るなり後ずさりした。
そんな顔を見ても微動だにせず、尚も口元を緩ませニヤリと笑う銀髪の男。
追い討ちをかけるように、チャイナ姿の女の子もニヤニヤしながら言う。

「なになに〜? ムキになっちやってェ。」
「絶対疚しい事があるネ。」
「男所帯の中にイタイケな少女が一人。真選組にそんな趣味があったとはなァ。」

女の子と一緒になって陰でコソコソ言うように口元を手で軽く押さえ、「プププ…ッ」と笑いながら言った。
其の時、プツンと何かが切れたような音がした。

「テメェ等……、今直ぐ此処で叩き斬ってやらァァァァ!!!」

土方さんは額に沢山の青筋を立て、瞳孔をより開かせ、腰に差していた刀を鞘から抜き、頭上に振りかざした。

「ちょっ、土方さん! 落ち着いて下さい!!」
「トシ、落ち着けェェェ!!!」

僕と近藤さんが必死に土方さんを抑える。
そして僕と湟謎と近藤さんで、何とか土方さんを宥め、踵を返して屯所に向かう。
まだ後ろから彼等が何か言っていたが、僕には聞こえなかった。