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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 一輪【沖→銀妙】 ( No.1 )
- 日時: 2010/06/30 23:22
- 名前: 夜湖 (ID: e65Hbqlh)
「あら、沖田さん」
綺麗な声に振り向く。
そこにはやわらかな、そして美しい笑顔があった。
大きな花束を抱えていて、彼女の笑顔はその花達の華やかさに負けてなどいなかった。
「どうしたんですかィ、そんなでかい花束。
持ちましょうか?
何かめでてぇことでもあったんですか」
「大丈夫、自分で持てるわ。
そうね、おめでたいことよ」
彼女はベンチに腰をおろすと、コスモスのまわりを二匹連れ添って飛ぶとんぼを眺めた。
何かを待っているのだろうか。
「秋は……好きですかィ?」
「ええ、好きよ。すごしやすいし、何より夕暮れが綺麗なの。それに……」
「お妙!」
彼女は遠くから聞こえたその声にすぐ反応した。
彼女は声が聞こえた方に向かって笑っていた。
さっきよりも美しかった。
自分に向けてそんな顔で笑ってほしかった。
彼女は立ち上がると、花束から一輪だけ抜き取り、
渡してくれた。
きれいな薄桃色のコスモス。
「じゃあ、またね、沖田さん」
小走りにかけてく彼女に手をふる。
彼女は名前を呼んだ男のところまでくると、またさっきのような笑顔で笑い、二人で歩き出した。
あの二人の中に、自分の入る余地はない。
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