二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

愛しい世界の壊し方 ( No.100 )
日時: 2010/07/22 21:12
名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
参照: http://2.syawa.net/nicotter/watch/sm11398357

「……愛したっていうのかよッ!?」

 悪いのは、誰なんだろう。多分きっと、俺が悪いんだと思うけど、俺はそれを認めたくなくて。
 だって俺は、緑川に言われるまでもなくちゃんと愛していた。大好きだった、それは今でも胸を張って言える。
 愛した、はずだ。いつもおはようって言って、笑顔で一緒に楽しく喋って、休みの日にはいつも一緒に遊んで、優しくしてくれたし俺も優しくしたつもりだし、たくさん一緒にいる時間を作ったつもりなんだ。
 なんで。俺が悪い? 俺が悪いのか? 俺が、悪い——彼女は、言っていた。

 ウルビダは、言っていた。

『なあヒロト、愛しい世界の壊し方って知ってるか?』

 見たこともないような綺麗な笑顔で、あの日ウルビダは言った。それだけ楽しそうに告げて、目の前から姿を消した。
 そこ——屋上から、落ちていった。

「お前は——お前は姉さんを傷つけていたッ!」
「……ッ!」

 傷つけていた? いつ? 俺はちゃんと優しくしていた、ウルビダと楽しく笑いあえる努力をした!
 ねえウルビダ、何がいけなかったのかな。ウルビダにとって、俺達がいるこの世界は愛しい世界だったんだろ?
 だったらなんで、その世界をわざわざ壊そうとするんだよ。

「しがみついてもがくことが、ヒロトの愛するってことなのかよ!?」

 しがみついてもがくこと。俺はウルビダに、しがみついていた? いつ? どこで? もがいていた?
 何か、迷惑を掛けていたっていうのかよ。俺が自覚していないところで、ウルビダは何を想っていた!?

 なんで、なんで? なんでウルビダが、死ぬ必要があった?

「……ヒロト、俺はお前を許さない」

 リュウジが、さっきまでよりも一層殺気を込めて俺を睨みつけてくる。
 ああ——リュウジは、ウルビダのことを“姉さん”と呼んで慕っていたっけ。
 ウルビダもリュウジのことが大好きで——その中に恋愛感情は含まれていないと願いたい——二人は姉弟のように、いつも笑っていた。
 
 壊した。俺がその世界を、壊した。壊した。こわした。コワシタ。壊して、しまった。

 いつ? どうやって? 俺はいつどこで何をして、ウルビダを自殺まで追い込んだ?
 わからない、そんなのわからないよ。ねえウルビダ、俺が何をした? 教えてくれよ、なあ。


『グラン、』

 
 いつだろう。多分、ずっと前——俺達がまだジェネシスになりたての頃だろうか。
 うっすらと、ウルビダの俺の名前を呼ぶ声が耳に届いた。覚えがある、ウルビダの幼くて、でもどこか哀しそうで寂しそうで——怒りが込められた。あの声。
 

『殺したって、いいよね?』


 今とは全く違う、幼い口調のウルビダの声が脳裏にこびり付く。
 

『グランが嫌う、私なんてさ』


 いつだったっけ。

 いつ俺が、ウルビダに“嫌い”なんていったっけ。

 ああ、そうだ。

 俺、言った。

 いつだっけ?

 いつだっけ。

 多分、ジェネシスのメンバーになって、練習を始めたばかりの時。

 時々ミスするウルビダに、言ってたなあ。『なんで上手くできないんだ、父さんの足を引っ張るな』って。

 あの時から、俺達はもう歪み始めていたのかな。




                                - 愛しい世界の壊し方




:参照 GUMI DECO*27さん モザイクロール
:ごみばこ様 h☆tp://dbm.nukenin.jp/ ⇒ お借りしました。