二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 白くて寒くて何も無い ( No.106 )
- 日時: 2010/08/09 12:51
- 名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v=J2rvCcUJP2c
(僕は、独り、根無し草?)
心臓を鷲掴みにされたような息苦しさと痛みが喉の奥から込み上げて、あっという間に口の中は血の味で埋め尽くされた。
抑える間もなく口内から溢れ出す大量の血とその臭いにむせ返ることしかできず、きりきりと痛む内臓を覆うようにして腕を腹部に当ててうずくまる。
(次の駅は、どこなの?)
ごくり、と口の中にたまった血が喉を下る。ねっとりとした気持ちの悪い感触が喉に絡み付いて、それを振り払うかのように再度大きく咳き込む。
視界は涙でぐしゃぐしゃで、何も見えやしない。ここがどこなのか、僕は何者なのか。
記憶が滅茶苦茶に掻き回されたように、頭の中は静かな混沌に満ちていた。嫌に冷静な脳に、血の味が刻み込まれる。
(帰りの電車は、どこにも無いの?)
どこにもない。なにもない。今の僕には、なにもない。迎えてくれる人も、他人のぬくもりもない。
孤独。なにもない。あるのはひたすら無ばかり。白、白白白白。ねえ、なにがみえるの? なにが、あるの?
無。無。無。無。あるのはそれだけ。あるのは無と、情けばかりの白ばかり。口の中に広がる不快な血の味だけが、僕の意識を支えている。
(教えてよ、ねえアツヤ、教えてよ)
僕は戻れるの? またキャプテン達とサッカーができるの? 貪欲な、力に溺れたこの僕が?
アツヤ、アツヤ。あの時は僕を必死に支えてくれたよね? ねえアツヤ、どこにいるの、アツヤ、アツヤ。
ああ、なんでエイリア石なんかに手を出しちゃったんだろう。アツヤは言っていたのに。
兄貴は独りじゃない、って言ってくれていたのに。
(ねえ、あつや)
なんだか、寒くなってきた。僕、このまま死ぬのかな。死ねるのかな。死ぬことができるのなら、喜んで死ににいきたいと思う。
僕なんて、いらないから。こんな馬鹿な僕なんて、存在している価値はないから。
寒い。体が震えてきて、奥歯ががちがちと鳴る。嫌な汗が背中を伝って、目から涙がぼたぼたと零れ落ちた。
ああ、僕、死ぬんだ。
今首に突き刺さっている台所から拝借してきた包丁が、なによりもそれを物語っていた。
ひゅう、と喉から酸素が洩れる。ろくに息もできなくて、目の前がだんだんと白くなってくる。
ちかちかとうるさいほど赤や黄といった目に痛い色が激しく点滅し、意識が薄らいでいく。
痛くて、寒くて、気持ち悪くて。嗚呼、早く死んでしまいたい。早く、早く。
——あにき
血の味が脳を侵していく。思考がぐにゃぐにゃになってきて、瞼が自然と閉じられる。
——兄貴
寒い。痛い。白い。なにも、ない。体の震えが、少しずつ収まっていくのを感じる。
——それが、贖罪なんだよ
ごめんね。ごめんね、キャプテン。ごめんね、風丸君。ごめんね、染岡君。ごめんね、豪炎寺君。
どうして僕は、みんながいるのにエイリア石なんかに頼ってしまったんだろう。
僕は、どうして? ごめん、ごめんなさい。でも、これでアツヤのところにいけるんだね。
これでまた、アツヤと一緒にいられるんだね。僕、嬉しいよ。また、一緒にアツヤとサッカーできるんだから。
——兄貴
(声が聞こえたような、そんな、気がした。)
ごめんね、みんな。ごめん、ごめん、ごめん、ごめ…………
- 白くて寒くて何も無い
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闇堕ちver.吹雪のその後。色々とごめんなさい。
参照:ハチP/初音ミク/リンネ ⇒参考にさせていただきました!