二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 大好き症候群(今更言えるわけないだろ、) ( No.121 )
- 日時: 2010/08/17 20:14
- 名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
☆
まるで昔からの知り合いのような感じでずっと一緒に喋って、そこまで凄く仲が良いわけじゃないけど多分そこらへんの男友達よりはいくらか仲が良くて。
喋っていると楽しくて、笑顔になって。馬鹿なところとか、人をからかったりすることもあるけれど。でも、優しくて。
根は素直で、ずっと一緒にいたいと思えて。アイツの笑顔を見るたびに、なんだか不思議な感じになって。
『あ、佐久間、笹本のことが好きなんだ』
『ばッ……げ、源田、てめえ殴るぞ!』
いつの日か源田と交わした会話を思い出すたび、どうしようもない面映い気持ちになって。
好き、って正直言うと否定し続けていた。もしこの想いに完全に気付いてしまったら、そしてそれを伝えてしまったら。
今のままの、いつもどおりのアイツの笑顔や一緒に馬鹿して笑ったり他愛も無いことも喋ったりできなくなるんじゃないかって、なんだか怖くなって。
俺が、このままの関係を壊してしまうことが怖くて仕方なくて。
『だからー、好きなんだろ?』
『……そんなんじゃねえに決まってるだろッ!』
源田にも馬鹿みたいにムキになって突っかかって。素直にこの気持ちを認めて、前みたいアイツと喋れなくなるのが嫌だった。ただ、それだけ。
これからもアイツの笑顔が見ていたいから。ただ、それだけ。
はっきりと自覚した今でも、アイツに告白しようかなんてことは思えなかった。
『じろー! どしたの、元気ないじゃん』
明るく笑うアイツは少しでも俺の気分が沈んでいるとすぐに気付いて、いつも声を掛けてくれて。
それで俺は何度も立ち直って、アイツには本当に感謝してるし、……親友だとか勝手に思ったりしてて。
この関係が、壊れてしまうのならば。アイツの笑顔が、俺に向けられなくなるのならば。
だったら告白なんてしたくないと、心の底からそう思った。
心の底では、必死にアイツのことを欲していたくせに。
* * *
アップが終わり、休憩時間に入ったころ。いつもどおりにマネージャー達にタオルやら飲み物やらを手渡されて、源田とか辺見とかと一緒にグラウンドに座りこんで話していた。
アイツ——笹本達マネージャーは、ベンチに座ってあれこれ話している。
笹本と何度か目が合いそうになっては、なんだか気まずくて慌てて視線をあらぬ方向へ向けてしまう。
いつもなら、何か喋るのに。何か喋って、いつもみたいに馬鹿笑いして。それがいつもどおりの、日常のはずなんだ。
……なんで、こんなに気まずいのだろう。いくら考えても、その答えは出るはずはないだろうけど。
「じろーう!」
ふと笹本に名前を呼ばれて、思わず顔が熱くなるのがわかった。
ずっとアイツのことを考えていたせいか、心臓がやけに大きくはねる。
いつもどおりなら、返事をしてすぐさまアイツのところへ走る。けれどなんだか今は、それが躊躇われた。
それでも行かないわけにはいかないんだ。立ち上がると、源田が声を掛けてきた。
「……ほら、早くいってこいよ」
「黙れ馬鹿」
イラついたから、そっけなく返しておいた。
* * *
“茉莉沙”
“……次の日曜、空いてるか?”
俺がさっき自分で言った言葉が、何度も何度も頭の中を駆け巡る。ああ、なんだか凄い恥ずかしいこと言ったような気がする。
顔が真っ赤になっていくのが、自分でもわかる。笹本の顔も赤いような気がするけど、正直そっちに気を配っている暇は無い。
なんとなく、凄く恥ずかしかった。ただ単に、遊びの誘いだと思えばいいのだ。そう、ただ単に。
日曜暇だから、笹本とどこかへいこうと笹本を誘った。そう、それだけだ。
なのに、なんでこんなに恥ずかしいんだろう。別に、デートなんてつもりはないのに。
……ない? 本当に? ないわけがないだろ。だって、あの誘い方は思いっきりそういう誘い方だろ。
しかもわざわざ『茉莉沙』って呼んでから。好意を持っているって丸分かりだろこれじゃ。
言ってから後悔したって、そんなの遅い。わかってる、わかってるのに。
怖くて、たまらない。『何を言ってんの?』、『ごめんね、空いてないや』など言われるかもしれない。
それが、別に怪訝に思ってじゃなくても。それだけで、十分俺にとっては怖いんだ。
だけど、笹本は。俺の予想とは裏腹に、にっこりと微笑んで——頬は赤いような気がする——言った。
「——当たり前でしょ、次郎」
……今更言えるかよ。お前のことが『好きだ』、なんて。
- 大好き症候群(今更言えるわけないだろ、)
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氷橙風様へ捧げます。大好き症候群ver.佐久間。相変わらずの駄文でごめんなさい。