二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【稲妻】one more time【話集】 ( No.199 )
日時: 2010/09/02 14:50
名前: 宮園 紫奔 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
参照: http://2.syawa.net/nicotter/watch/sm11958275

*現のあなた*


「あたしはね、遊園地の女王なの」

 酷く歪で不安定な表情で、彼女は淡々と言った。歌うように、囁くように、とてもとても愉快そうに。果たしてなんと反応してやればいいのだろうか。いつもの冗談だろうか。
 なにか声を掛けるべきなのだろうか。いや、まだ彼女が何をしたいかも何を言いたいのかもただの彼女の妄想なのかもただの冗談なのかもただの現実逃避なのかもわからないのだから、とにかく彼女の言葉を待つことにした。

「世界は、あたしの手の上でくるくると廻ってるのよ」

 彼女はそういって、先程までずっと自分の髪を弄っていた人差し指を、天井へと向けた。何かを指し示すわけではなく、まるでトンボでも誘導するかのようにくるくると回す。
 今あの指の上にサッカーボールがあったら、きっと彼女は上手く回しているころだろう。ということは、あれはサッカーボールが指の上に乗っているという示しなのだろうか。世界がボールなのか?
 なんてことを考えても、どうにもならないだろう。やはり何を言えばいいかわからなかったので、また言葉を待つ。

「けど、あたしには手錠がついてるのよ。あたしは、手錠つきの主なの」

 ——愉快でしょう? 唐突に彼女にそう尋ねられたけれど、どう答えればいいのかわからなくて言葉に詰まってしまう。そもそもまさか疑問を投げかけられることなんて予想だにしていなかった。
 俺は何もいえなくて、彼女の言葉が再度紡がれ始めるのを待つしかない。一体彼女はどうしたというのだろう。
 いつもの彼女はおせっかいで仲間想いで明るくて、クールな所もあって笑顔が可愛くて、一緒にいるととにかく落ち着いたり元気がもらえたりした。彼女の瞳とピンク色の髪を見ると、酷く落ち着く。
 そんなお前は、どこへいってしまったというのだろう。

「あたしはいつも木馬の上に乗っているの」

 明るく澄み切っていた瞳にはなみなみと狂気が注がれ、光を失くしている。深い闇を湛えたような、じっと見つめると吸い込まれそうになるような、不思議な感情に陥らされる。
 口元にだけ今にも崩れてしまいそうな脆い笑みを貼り付けて、泣き出しそうに目には涙を溜めて。ぴんっと張り詰めたどこか幻想的なその表情に、破壊衝動が何故か湧き上がる。
 お前を壊したいわけじゃない、壊したいのはその表情なんだ。ぼんやりと、心の中で言い訳するように唱える。

「そこから見えるのは、仮初の理想郷」

 カリソメの、ユートピア。彼女の唇が、そう言葉を紡いだ。果たしてそれが何を意味しているのか、全くもって俺にはわからなかった。カリソメの、ユートピア。
 心の中でもう一度復唱してみたけれど、やはりそれだけで意味がわかるはずもなかった。理想郷、すなわち幸福?

「世界が壊れても、あたしはここにいるの」

 ——だってここは、あたしの理想郷だもの!
 彼女はそう叫んで、口元に模られた笑顔を顔全体へと自然に広げていった。目が細められ、そのせいか目から溜まった大粒の涙が二筋零れだし、頬を這って痕を残す。
 ここは自分の理想郷だから、世界が壊れても自分は消えない。自分の理想郷は消えない、自分の幸福は消えない。自分はずっとここにいる、自分の幸福は永遠。
 ぼんやりと、解釈してみた。とはいえ不十分なところが多すぎて何がなんだかわからない。いきなりこんなことを言い始めるなんて、本当にどうしたのだろうか。

「ねえ明王、もし帰れなくなっても」

 ふと名前を呼ばれて、彼女を再確認する。彼女はあまり離れていたところにいるわけでもなかったのが、気がつくとすぐに隣にいた。すぐ、隣に。いつの間に、そんな疑問が過ぎる暇が無かった。
 首筋に酷い違和感と強い衝撃が走り、生温い液体が顔や腕に飛び散る。その生々しい感覚を感じた瞬間に——痛みが首全体で灼熱した。轟、とまるでガソリンを与えられた炎のように。
 しかし気がおかしくなっても不思議ではない痛みを感じたのは、ほぼ一瞬のことだった。じんわりと、次第に痺れのようなものが体全体を蝕んでいった。感覚が、途絶えていく。
 
「恨まないで」

 そんな彼女の声が耳に届くと同時に、体が氷水にでも放り込まれたように急激に体温を失っていった。本能的に理解した。俺、死ぬのか。何故理解できたのかはわからないけど、死ぬ直前になると勘でも冴えるのか。
 いや、もしかすると。もしかすると俺は、お前に殺される心当たりでもあったのかもしれない。もしかすると、だけど。だったらお前に殺されても、文句は言えないだろう。誰も憎まないよ、お前のことなんて。

「、ね」

 ごめんな、忍。



(あなたの存在の消滅)



+++
参照を聴いて突発的に書きたくなった。たかふど。ヤンデレではないがタヒネタに走ってしまったたかふど。
悪ノP大好きです。サムネと題名でマチゲPかと思ったのは秘密。
「、ね」は仕様です。ミスとかじゃないんで突っ込まないでね! 雰囲気だそうとしたが失敗したっていう。
俺的イナイレキャラの関係っていうか過去とかを作りすぎた結果です。どんな関係かとかは教えない。戯言ですもん。ただ、たかなしちゃんに花屋って似合うと思うんだ。
ということで俺的イナryのせいで理解不能な話になりました。わかってるの俺だけ。誰得だよ自重しろよ俺w
参照の歌詞より引用させていただいたりとかしています。そのうち俺的ry書くかも。お目汚し失礼しますた。