二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

黒と融けた / ふどたか←げん ( No.251 )
日時: 2010/10/14 20:44
名前: 宮園 紫奔 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)

   ( 黒と融けた )


 どす黒い、すっかり血色の悪くなった右の手のひらに左手を添えてみる。とにかく冷え切ってしまっていて、温度は完璧に霧散し壊死してしまっている。うーむ、この状態でいるのは果たして危険なのだろうか。いやでもどうせ手のひらだからなあ。たかが手のひら、されど手のひら——なんて事態にならないようにだけ、願っておこう。
 手首にすけて見える血管を突き破るんじゃないかと言うほどの勢いで小鳥遊が爪を俺の血管に突き立ててから、たぶん三十分ぐらい。正確な時間はわからないけれど、それぐらいは経っているような気がする。
「なあ、」
「……なの」
 ——嫌なの。
 か細い、今にも霧散してしまいそうな、儚く小さな小鳥遊の声。いつもの彼女からは到底予想できない、酷く弱気な声音。何か声を掛けたくても言葉は頭に浮かんでこないし、行き当たりばったりで声を掛けようとしても小鳥遊の囁きで遮る終えなくなる。
 それでも、彼女がそういう状況に陥っている理由はわかってしまっているから。そしてそれが、半ば思い違いであるということも。真実を伝えるべきかと逡巡してみるが、どうにも言葉が見つからない。
 それに、俺なんかが言ったら。俺なんかが言ったら、ただの気休めぐらいにしか思ってくれないだろうから。なあ、不動。お前の口から、伝えてくれよ。
「嫌なの、不動がほかの人に向けて笑ってるのを見るのが」
 どうしようもないほど、小鳥遊はお前のことが好きなんだ。俺なんかじゃ、どうにもできない。わかってるんだろ、お前は。そんな言葉だけじゃ、しっかりと小鳥遊に意思を伝えることができないって。
「ねぇ、源田」
 面と向かって言えばいい。“真・帝国学園が勝利するまでは、このままだ”と。お前は好きなんだろ、小鳥遊のことが。でもその感情が、勝利を邪魔するんじゃないかと危惧してるんだろ。
「あたし、どうしよう」
 伝えてやればいいのに。じゃないと佐久間に、“俺も小鳥遊のことが好きだった”って笑っていえないだろ。





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しのぶ総受けは至高だと思うんだ。気分的にげんしの。しのげんも書きますお。