二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 何もかも捨てることが(、できるというなら) ( No.299 )
- 日時: 2010/11/16 22:18
- 名前: 宮園 紫奔 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
- 参照: さくまり←ふど←たか +げん / >>296続き
何もかも捨てることが(、できるというなら)
じりじりと、不快な違和感が脳髄を焼く。いつの間にか食いしばられていた奥歯が、鈍い音を立てた。手のひらに爪をつきたてる。手のひらに爪が食い込み、異物感とともに痛みがかすかに灯った。そうでもしなければ到底自分を抑えられないと、わかっていたから。
気付いてしまった。喉の奥でずっと燻り続けていた大きな違和感の正体に、気付いてしまった。どうせなら家に帰ってから気付けばよかったのに。そうすれば、少しはあたしも冷静に考えることができただろうに。
どうして、ねえどうしてあたしは、部活中にこんなことに気付いてしまうんだろう。佐久間もいる茉莉沙もいる明王もいる源田もいるなのに。みんな、いるんだ。あたしの喉の奥でつっかえている思いを言葉をぶつけられる人ばかり、周囲にいる。
でもあたしが一番伝えたいのは、茉莉沙になんだよ。茉莉沙に全部伝えたい。吐き出したい。やっと気付くことのできた、憤りと空虚なこの言葉を。全て吐き出せばきっと楽になれるだろうけど、それは——誰かを傷つける、ということを意味していて。
それでも傷つけなきゃ、今傷つけなきゃ、あたしはあたしでいられないような気がする。怒りで我を失ってしまいそうで、怖い。もしそうなったら、あたしは何を言ってしまうかわからないから。
「ねえ茉莉沙、」
佐久間に伝えようかと思った。茉莉沙ではなく、佐久間に。けれどそんなことをしても何も意味がなく、むしろ状況は悪くなるだけだとわかっていた。それでも直接茉莉沙に言うのは、躊躇われた。
あたしは、茉莉沙のことが好きだから。友達で、いたいから。ただ、それだけのこと。それだけの小さな感情が、今にも堰を切ってあふれ出しそうなあたしを留めていて。
「話したいことが、あるの」
でもごめんね、茉莉沙。もう、無理。あたしがもっと強かったら、きっとこんなことにはならなかったんだろうね。けどあたしは、明王が好きだから。明王のことが、大切だから。だから、あたしは。
*
「……なんだよ」
きつく顔を顰めながら、どこか責めるような憤った瞳でこちらを睨みつけてくる佐久間に、不動が問いかけた。その声音には苛立ちが滲んでいて、さっさと部活に戻らせろ、と語らずとも汲み取れる。
「小鳥遊が泣いてた。だから、殴ってやろうと思って」
きっ、と佐久間の目が鋭くなる。佐久間のその言葉を聞き、不動は不快感を顕にした。溜息をつき、どこか怒りの込められた視線を宙に彷徨わせる。どこか躊躇いがちに、それでいて力強く、不動が言葉を口にした。
「てめえには、関係ないことだろうが」
この言葉を発してしまえば恐らく口論を越え、殴り合いに酷似した喧嘩に転ずるだろうとは予測できた。だからこそ躊躇ったのだが、言ってしまったのならどんなことを考えても全ては後の祭り。
そう考えながらも心中不動は、そうはならないんじゃないかとぼんやりと感じていた。相手が、佐久間だからそう思うんだろうな、と吐き捨てるように心中で呟いて、佐久間の目に自らの焦点を合わせた。
「関係なくなんてない。俺は小鳥遊に相談されたんだよ、どうすればいいかって」
——だからこうすると、決めたまでだ。
きっぱりと揺るがぬ意思を目にうつして言い放った佐久間を睨みつけながら、不動はコイツらしい行動だと納得する。誰であっても、助けを求められればそいつの身になって考え、行動する。
真・帝国時代から見てきた佐久間の思考は、少々不動は苦手だった。正義感というものは嫌いではないが、どこかお人よしすぎる佐久間の思考には呆れしか浮かんでこなかった。
なのに佐久間の行動のほうが正しいのだと後々判断する自分に、嫌気がさして。嫌な過去を思い出し目を細めながらも、佐久間から視線をはずすことはなかった。互いに、相手が何を言うか、どんな行動を取るかと、身構えていた。
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ごめんなさい昨日更新できなくてほんとごめんなさい。
しかも今回gdgdです次じゃ終わりそうにないです\(^p^)/