二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

!さくまり甘め 誕編 ( No.311 )
日時: 2010/12/14 19:06
名前: 宮園 紫奔 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)

「さむ……」
 いってきます、そう告げて玄関から出た途端、一気に冷気が押し寄せてきた。最近寒くなってきた上に、今日は雨まで降っている。それに、日直で朝早く学校に行かなきゃならない。
 首にマフラーを巻いて手袋をはめてから、傘を広げた。そこまで強く降ってるわけじゃないけれど長い間降り続けていたからか、いくらか大きな水溜りがあちこちに出来ていた。
 はぁ、と口から溜息が洩れた。学校まではそんなに距離があるわけじゃないけど、今日はひとりだ。鍵開けの当番になんてならなきゃよかった、なんて今さらいってもどうにもならないことを思う。
 少し寂しい、と素直に思った。いつも友達と一緒に騒ぎながら登校しているせいなのかも。それに雨が降っていてテンションも下がっているから、余計に強くそう感じるんじゃないかと分析してみる。
「……早くいこ」
 ちゃんと日直の役割を果たさないと、何日も続けて日直をさせられてしまう。それだけは嫌なので、早いところ学校へ行くことにした。学校へつけば、雨に当たらないですむし。
 やだなー、と心の中で悪態をつく。こうやってずるずるいやだいやだと引きずるのにも、理由がある。今日はあたしの誕生日だった。誕生日なのに、こんな仕打ち、ねえ。
 神様とやらが本当に存在しているならば、一度は顔を見てとりあえず何度か殴ってやろうと心に決めた。

 学校には、大体二十分程度でつく。けどひとりで歩くのは、酷く退屈だ。朝早いこともあって、車がいくらか通るだけでいつも通るにぎやかな道はとても静かだった。そして雨がそれに加勢する。ああ、雨が憎くなってきた。
 いつもならあっという間に感じられる二十分程度の道のりが、酷く長くゆっくりと感じられた。思わず、歩調を速める。静かすぎる。あたしは静かなのにはならてないんだよなあ、結構寂しいかも。
 なんて呟けるのも心の中でだけで、口に出して万が一アイツら——サッカー部のやつらにでも聞かれたら延々とネタにされるに決まっている。それだけは避けたい、絶対に。
 そんなことを思いつつも、結構学校へ行くのが楽しみだった。みんななんていってくれるだろう、というかあたしの誕生日をみんなは覚えているのか……なんてネガティブな方向に考えるのはあたしらしくないから、頭の片隅にこの話題は投げ捨てておくことにした。
 でもせめて、アイツには——なにか、言ってほしいな。抵抗もなく吐き出された心の中の言葉に、思わず面食らってしまった。あれ、あたしってこんなに素直だったっけ?
 なんかもう思考がぐちゃぐちゃになってきたから、ぶんぶんと頭を振って——
「何やってんだよ、もっと馬鹿になるぞ」
 後ろからいきなり声を掛けられた。聞きなれすぎた声で、そしてさっきなにか言ってほしいとか思っていたアイツの声で——
「……じ、次郎ぉ!?」
「なんだよ俺は幽霊か悪霊か何かなのか」
 え、なんでこんなところに次郎がいるの? いや確かに途中の曲がり角までは帰る道は一緒で、その曲がり角をさっき通り過ぎて、今日は雨が降ってるから朝練なんてないし、ていうかなんでこんなに朝早く次郎が登校してるのあたしと一緒で日直じゃん、次郎は鍵開けの役割じゃないじゃん。
「……いや、お前なんて顔してんだよ。驚きすぎじゃねえ?」
 次郎のそんな呆れ返った声でふっと我に返って、そしたら急に顔が熱くなってきて、なんか一気に赤面してるのがわかって。いつもはこうならないのにこうなってしまったのは、多分さっきあたしが次郎になんか言ってほしいとか思ってたからで。
 ああだめだ、恥ずかしい。思わず顔を伏せて、言葉だけ返した。
「な、なんで次郎がいるの……?」
「お前だと心配だったんだよ。寝坊するんじゃないかと思ってな」
 顔を上げれないから次郎の表情は見れなかったけれど、きっと今次郎はにぃっと悪戯好きな笑顔を浮かべているに違いない。いつものあたしならここで『寝坊なんてしないわよ、次郎じゃないんだから!』とでも言い返しただろうけど——なんていうか、今はそれどころじゃなかった。
「おい、早く行くぞ。遅れたらどーすんだ」
 いや、遅れる理由(あたしがこうやってどぎまぎして立ち尽くす)を作ってるのは次郎でしょ……なんて言い返す暇も与えず次郎が歩き出したから、あたしは小走りでついていった。

 普段どおりな会話を交わしながら、学校へとついた。学校までの距離はそんなに残っていなくてあんまり次郎と喋れなかったから、少し残念な気もした。途中からいつもの調子を取り戻すことができて、静かで寂しかった道のりは一気に明るく楽しいモノへと変化した。雨なんて、全く気にならなくなった。
 教室の鍵を開ける。幸い誰もまだついていなくて、とりあえずこれであたしの日直の仕事は果たせたことになる。ふーっ、と大きく息を吐く。寒かったけど頑張ったよー、と心の中で叫んでみる。
「次郎、ありがと。ま、別に一緒に来てなんて頼んでないけどねー」
 それでも楽しく学校まで登校できたのだから、礼を言っておくことにした。なんていうか、気遣ってくれたのも嬉しいし……いや、寝坊なんて理由では全くムードなど無いのですけれどもね。
「あ、そだ、笹本」
「んー?」
 次郎はもう既に自分の机へと鞄を置いていて、なにやら鞄の中を探っていた。ふと声を掛けられて次郎のほうを見ると、「ちょっと待て」と言われた。呼んだのはそっちなのにー、と冗談交じりの不満を笑顔で言った。
 あたしも自分の机へと鞄を置いて、教科書を取り出す。そうしていると次郎があたしの机のほうへ歩み寄ってきて——あたしがふっと顔を上げると、目の前にピンク色の可愛らしい小包が差し出されていた。
 え、とあたしが戸惑いの声を吐き出す前に、次郎が少し頬を赤くして視線をあらぬ方向へと彷徨わせて、言った。
「……誕生日、おめでと」


*あたしときみの雨の日のこと

_____________________________________
氷橙風様、もといふー、誕生日おめでとおおおおっ!!!
おめでとうマジおめでとうどうしよう何回言っても足りないから俺の愛を捧げます(いらねえよks
いつも仲良くしてくれて有難う! ふーと喋れてとても楽しいお^^
えーと、こんな馬鹿野朗でよければこれからも仲良くしてくれたら嬉しいな、とか……!
改めて、誕生日、おめでとう!

佐久茉莉、頑張ったけど甘くなったかな……あああもうこんな駄文でごめんなさいほんとごめんなさいorz
とりあえず愛だけはいっぱいつめてみたんだ!(いらねぇ
こんなものでも喜んでもらえたら嬉しいです^p^ しょぼくてすみませんでしたっ……。