二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

私の寝起きは兵器です。 ( No.36 )
日時: 2010/07/12 18:05
名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)

「がーぜーるー」

 ぼんぼんと乱暴にガゼルの頭を叩くバーン。ガゼルは寝ており、音だけでもかなり痛いはずだが全く動じない。
 ん、と呻き声は上げるものの、目を覚ますところまではいかない。先程からずっとこれの繰り返しだ。

「……起きろよいいかげーん」

 ため息をついて、再度ばちりと今までより大分強くガゼルの頭を叩き——
 がしり、とその腕が掴まれた。

「……え」

 いきなりの行動にびくりとしつつ、バーンがぽつりと言葉を零した瞬間——ぐわん、とバーンの見ている世界がぐるりと回る。何の比喩でもなく、確かにその時バーンは回っていた。
 体ごと、ガゼルに腕を掴まれて。だんっ! という激しい音とともに、バーンが壁に叩きつけられる。

「!?」

 二人の様子を遠くから眺めていたヒートとネッパーは、いきなりのことに驚愕する。
 笑うことも、かといってバーンに駆け寄ろうとも思えず——追撃に巻き込まれるのが嫌というのが本心で——、ただ沈黙する。
 一瞬の間の後、ヒートとネッパーは顔を見合わせる。引き攣った笑みが顔に浮かび、苦笑がお互いの口から洩れた。

「……ってぇ!」

 いきなりのことに呆然し、それに加え壁に叩きつけられたことで肺の中の空気を全て失くし、一瞬呼吸ができなくなり目の前が真っ暗になりかけたバーンが覚醒する。
 痛みに顔を顰めながら立ち上がり、何も無かったかのように眠っているガゼルに向かって大きく吼えた。

「てめえええ! 今から練習なんだよ起きろ今すぐ起きろさあ起きろじゃないとアトミックフレアするぞおらあ!」

 追撃が来るのではないかとびくびくしながら、ヒートとネッパーは半ば諦めた様子でバーンを眺めていた。
 ウルビダでもつれてこれば一発で起こしてくれるだろうが、ジェネシスはもう練習が始まっている時間だ。
 もういいや任せとこうといった表情で、二人はぽつぽつと言葉を交わす。

「……俺ら、別にいかなくてもいいよな」
「うん。……怪我するの嫌だし」
「同感」

 そんな短い会話をした後、ダイヤモンドダストの女子の誰かでも連れてくるかということになり、二人はガゼルの部屋を出て行く。
 残されたバーンのことは対して気にも留めず、「死なないでくださいねー」とだけ言い残し、バーンが何か言葉を発する前にネッパーが思い切り扉を閉めた。

「んじゃ、行くかー」
「おー」

 気の抜けた言葉を零しながら、二人は足早にその場から立ち去った。

        * * *

「起きろやあああああ!」

 ヒートとネッパーが出て行った後、今度はガゼルに想いっきり鳩尾を殴られたバーン。
 大きくむせこみふらつきながらも、そう叫ぶ。相変わらずガゼルは、んー、と唸っているだけだ。

「練習行くっていってんだろがーっ!」
「やだ」
「へ?」

 大きく吼えたバーンの言葉に、ガゼルがぽつりと言葉を返す。いきなりの言葉にバーンの間の抜けた声が響く。
 半目にも行かないぐらいに小さく開かれた瞼は、今すぐにでも閉じられてしまいそうにゆらゆらと揺れている。
 
「やっと起きたかテメエ! アトミックフレアしてやるからは覚悟しとけちゅうにびょ——」

 う、まで言い終わらないうちにまたもやバーンの世界が反転する。だんっ、という乱雑な音とともにバーンが落ち、視界にうつる世界がやっと正常は元に戻る。
 ふわあ、と大きく欠伸をし、ガゼルはがばっと布団を被り完全に寝る体勢に入る。

「……っあ……ガゼルのやろお……ッ!」

 起き上がって頭を引っぱたいてやろうとしたバーンだが、体に力が入らず、入れようとしてもずきずきとした嫌な痛みが体のあちこちに走り、結局起き上がることを断念する。
 はあーっと大きくため息をつき、とりあえずはヒートとネッパーが帰ってくるのを待とうと思い——

「……アイツら、帰ってくる気あんのかよ……!」

 そう気付き、再度大きなため息をついた。

          * * *