二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

私の寝起きは兵器です。 ( No.43 )
日時: 2010/07/13 16:10
名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)

「ガゼル様は無理よ。起こそうとしたら殺されるわ」

 『ガゼルを起こすにはどうしたらいいか』というヒートとネッパーの問いに、クララが淡々と答えた。
 いつものすました表情に微苦笑を浮かべながら、言葉を続ける。

「バーン様が起こしてるんだって? 無理無理。やめといたほうがいいわよホント」
「あ、でも前グラン様が起こしてなかったっけ?」

 クララの言葉に続き、リオーネがんーと唸りながらそう言葉を洩らす。
 「それ本当?」とヒートが尋ねると、あぁとクララが思い出したのか頷きながら声を上げた。

「アイス買って来なさい」
「は?」

 それからびしっとヒートとネッパーに向かって指をさし、命令口調でそう告げた。
 いきなり何を、と少々むっとしながらネッパーが思わずといった様子で言葉を洩らす。

「ガゼル様って、起こす時はアイスでつるのが一番よ」
「そうそうそれ! 人に起こされるともうほんとに兵器よね兵器」

 指をさしたままクララがそう言うと、リオーネがあははと楽しそうに笑いながら言う。
 へぇ、と納得したような感心したような大して表情の読み取れない顔で、ネッパーが頷く。

「そうなんだ……有難う、クララちゃん、リオーネ」
「どーいたしまして。まぁ、頑張ってね。練習時間には遅れないでよー」

 ヒートの礼に、相変わらずのすました表情——今はもう微苦笑ではなく、呆れたような笑みだった——でクララが返す。
 多分ね、と返してヒートはネッパーと一緒に歩き出す。無論、未だバーンが戦闘しているであろうガゼルの部屋へ。
 
「……パシリはバーン様でいいよな」
「もちろん。もう全部任せとけばいいよ」

 投げやりに、楽しそうに笑う二人。バーンが今、生命の危機に陥っているとも知らずに。
 
         * * *

「……すいませんでした」
「黙れ低脳! お前は一生そこで土下座してろ」
「一生かよ!?」
「うるさい」
「すいませんでした」

 相変わらず寝ているガゼルをよそに、鬼のような形相のウルビダの前でバーンが土下座させられていた。
 そのまま会話を交わしているという、なんとも奇妙な光景だが——ある意味ウルビダがいるということでは、妥当なことかもしれない。

 グランにガゼルのことを言われ、一応ということでガゼルが起きているかを見に来たウルビダ。
 部屋のドアを開けてみると、壁に背中をついて今にも寝てしまいそうなバーンがいた。
 無論ガゼルを起こせているわけもなく、結局二人揃って寝てしまいそうになったというわけだ。
 それでウルビダが怒らないはずがなく、……土下座している今に至る。

「……さて、ガゼルを起こすか」

 ウルビダがため息とともにそう言葉を零す。

 ——悪魔の囁きだな、まるで。

 それを聞いてバーンが苦笑しながら——といっても顔は伏せているが——心の中でぼそりと呟く。
 少々ガゼルのことが心配になりながら、そういえばと今頃思い出す。

「(ヒートとネッパー……帰って来るのかよ)」

 とはいえ、半ばもう帰ってこないだろうと思っていた。後でぶん殴ってやろう、と考えていると——

 がちゃ、

 と唐突に部屋のドアが開いた。バーンは反射的に顔を上げ、誰が入ってきたかを確認する。
 ウルビダの大きく振り上げられた手が下げられ、ウルビダもドアのほうを見据える。

「バーンさまあー、パシらせてください」
「……は!?」

 暢気な声を響かせながらヒートが部屋の中へと足を踏み入れ、続いてネッパーも入ってくる。
 いきなり言われた想像もしない言葉にバーンは「ふざけんなああ」と立ち上がり、ヒートのほうへと向かう。
 否、向かおうとした。しかしその瞬間、ウルビダにがしっと肩をつかまれ——

「誰が土下座やめていいなんていった?」
「……すいませんでした」

 何回目になるかもわからない謝罪をして、再び土下座の体勢に戻るバーン。
 そこでウルビダの存在に気付いた二人は、あー遅かったか、とバーンに哀れみの視線を送る。

「……ガゼル様、アイスでつれるそうです」

 苦笑しながらヒートがウルビダに向かってそういうと、「そうか」とウルビダが言葉を返す。

「じゃあバーン、いってこい」
「俺かよ!?」
「さっさといってこい」
「すいませんでした」

 次いで放たれたウルビダの言葉にバーンが思わず顔を上げ反論する。
 しかしすぐさまウルビダに一蹴され、結局パシられることになる。

 その後、話し合いにより今日のように早朝から練習がある日のガゼル起こし役はバーンに決まったとか。




(それってつまりパシられるってことじゃねーかっ!)





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