二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 歪んだ彼と壊れた彼女 ( No.67 )
- 日時: 2010/07/15 22:27
- 名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
(ごめんね、)
(愛してるよ。)
囁かれたその言葉は、もう遅い。今更腕に込めた力を緩められるはずがなく、あなたは私の目の前で死んだ。
ばいばい。今まで有難う。あなたと出会えて幸せだったよ。多分、不幸のほうが多かったけどね。
もう、何も言わないから。ねえ、安らかに眠って? お願いだから。もう、私を苦しめないで。
おやすみ、ばいばい。
ごめんね。私のほうこそごめんね。最後まで私のわがままにつき合わせちゃってごめんね。
私とあなたは敵同士。ねえ、そうでしょう? 愛してくれて有難う。私もあなたのこと、愛してた。
大好き。今も大好き。狂おしいほど好き。あなたを壊しつくしたいほど好き。愛してる。私だけのものであってほしい。
でもそれも、叶わぬ願い。
別にいいの。こんなこと、最初から予想していたのだから。ごめんね、ごめんね。
だって、命令だから。ガゼル様の命令だから。勝たなくちゃいけないから。まず、あなた達を潰さなきゃいけないから。
あなたのことは愛してるけど、でも、ガゼル様に褒められることのほうが好き。
あなたと一緒にいて寄り添うぐらいなら、ガゼル様と一緒に喋っているほうが好き。
大好きなのに、おかしいよね。結局私の愛は、それだけのことだったのかなあ?
あれ、なんでだろ? なんで涙が溢れてくるの?
「……ひーと……」
ばいばい。あなたはもう死んだ。それだけ。他に何も無い。ねえ、そうでしょ? ねえ。
お願いだから。あなたは死んでも私を苦しめるの? 大好き。愛してる。だからもう、私を放して。
「……くら、ら……ちゃ……ん……」
「——ひーとっ……!?」
なんで? なんでまだ生きてるの? ちゃんと首絞めたよ。私、ちゃんと首絞めたよ。
ああだめ、殺さなきゃ。ガゼル様のためにも殺さなきゃ。ガゼル様、ガゼル様が言ったんだもの。
どれだけ私があなたを愛していたとしても、ガゼル様の命令なんだから私はあなたを殺さなきゃいけない。
ごめんね。私達、ダイヤモンドダストを勝たせて。お願いだから、ねえ。もうガゼル様の苦しむ姿は見たくないの。
「……しんでよっ……ねえ死んでよっ……ひーとお……!」
「ごめんね……俺、馬鹿だからさ……」
もう何も言わないで! 早く死んでよ! もう嫌、私を苦しめないで!
ねえ、ヒート! お願いだから——!
「最後に、もう一回だけ……」
言わないで。その先を言わないで。壊れてしまう、私が壊れてしまう。そしてあなたを、ぐちゃぐちゃにしてしまう!
私は決めた。ガゼル様につくすって決めた! せっかく決めたのに、もう揺るがせないで!
なのに、先を聞きたいと思う私は——……!
「愛してる」
ぐったりと、それだけの言葉が紡がれたあなたの唇が、みるみるうちに青くなっていくのを、私は冷めた表情で静かに見下ろしていた。手は、あなたの首に添えたまま。
(あなたが私を壊すたび、)
(それでも私は愛を感じていた。)
(なんて愚かなんでしょうか。)
- 歪んだ彼と壊れた彼女