二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 壊れたキミに花束を ( No.68 )
- 日時: 2010/07/16 18:19
- 名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
「バーン様」
ああ、もう死んでしまえばいいのに。コイツだ。コイツだけなんだ。
俺を幼い頃から知っているお前さえいなくなれば、俺は自由になれるのに。俺は強くなれるのに。
お前だけなんだ。お前だけ、お前だけ! ああ、もう早く死ねよ。どうして死んでくれないんだよ。
なんで口から血を吐いてるっていうのに死なないんだよ。なんで包丁で腹刺したのに生きてるんだよ。
もう、壊れてくれよ。壊したっていいだろ? 早く、早く壊れてくれ。
血だってこんなにいっぱい出て、顔だって蒼白で、体とか震えてて、言葉も満足に紡げなくて。
それなのになんで、壊れてくれないんだよ。なあ、ヒート。お前は昔から、こうだった。
「晴矢」
「死ねよっ……死んでくれよっ……なあ……っ!」
壊したっていいだろ。お前は俺のことが嫌いなんだろ。『晴矢は変わったな』って前も言ってただろ。
今更晴矢って呼ぶな。昔みたいに、そんな懐かしそうに、そんな綺麗に笑って、俺の名前を呼ぶな!
お前は病弱のくせに、無理して俺についてきて。いうもいつも怪我して倒れて心配かけて、そのくせいつも俺を助けてくれて。
ふざけんな。お前が死にそうになった時だって、俺の心配ばかりして。ふざけんなよ、なあ、ヒート。
人の心配ばかりして。なんで俺に構うんだ。なんで人に構うんだ。もうそんな優しい笑顔を見せないでくれ。
「晴矢」
もう呼ぶな。お願いだから、もう呼ばないでくれ。そんな温かい昔と変わらない笑顔で俺の名前を呼ぶな。
せっかく決心したっていうのに。せっかくジェネシスになるための行動を起こす決心をしたっていうのに。
グランを殺すっていう決意をしたっていうのに。
お前なんだ。お前がいるから、俺はそれができないんだ。お前が見ているから。
昔から変わらない、優しい温かい眼差しで俺を見ているから。お前の前で、人なんて殺せない。
罪なんて、犯せない! この手を血で染めることなんて、できるはずがない。
「晴矢」
「っさい……うるさいッ!」
幼馴染で腐れ縁のヒート。小学校の時も、六年間ずっと同じクラスで。いつも一緒に笑っていて。
哀しい時は一緒に泣いてくれて。嫌なことがあった時は、一緒に落ち込んでくれて。
なんでそんなに、お前は優しいんだよ。もう、俺を放してくれよ。お願いだからさ、俺に力をくれよ。
早く死んでくれ。そう心では叫び続けているというのに、なんでこれ以上力が入らない?
放っておけば、きっといずれ死ぬ。でも、きっとコイツはそれまで俺の名前を呼び続ける。
それまで俺は、耐えられる? きっと、耐えられない。なら、今すぐ壊してしまおう。
早く、早く早く早く! 今すぐに、もっと腕に力を込めて。もっと包丁を深く突き刺して。
「——晴矢」
ああ、だめだ。やっぱりコイツには敵わない。
(間違った道になんて進ませない)
- 壊れたキミに花束を