二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 大好きの裏返し/いじわる/貪欲な君に憐れみを/綺麗な死に方 ( No.86 )
- 日時: 2010/07/20 21:41
- 名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
「ねえネッパー、死んでみたいと思うんだけど」
いきなりクララにそういわれた。いや、ちょっと困るんだけどさ。
なんて言ってやればいい? 『俺もだよ』? 『なんで死にたいと思うんだ?』、みたいな感じか?
いや、でもそれは俺の思っていることと少し違う。いっそ、俺が思っていることを言ってしまおうか。
別にクララとは付き合っているわけでもないし、ましてや表面上ではライバル同士だ。
いくら傷つけようと構わない。言ってしまえばいい。
「だったら勝手に死ねばいい。そんなこと俺に言う暇があったらさっさと死ねば?」
言った。何故か彼女は酷く寂しそうな顔をした。何故か罪悪感が湧き上がってきた。
- 大好きの裏返し
「ばーか」
けらけらと笑ってそういってやると、緑川はむっとして俺をじとっと睨みつけた。
やっぱり緑川は単純だなあ。本当にそう思っているわけでもないのに。
なんだかおちょくってみたくなって、俺は緑川に囁きかけた。
「ねえ、なんで君なんかが日本代表に選ばれたんだろうね?」
ほら、またそうやって真に受けて泣きそうな顔になる。嘘だよ、って言ったらどんな反応するだろう。
ヒロトも同じだろ、って言って反論してくるだろうか。それとも、「ばか」ってなじって泣くだろうか。
多分、後者。あーあ、目が潤んできてる。本当に緑川は馬鹿だなあ。
- いじわる
けらけらと笑う気持ちの悪い嘲笑が今でも耳にこびり付いていた。あーあ、何を聞いたら剥がれ落ちてくれるだろう。
この曲? だめだ。これかなあ。ああ、まただめだ。じゃあこれ! ……なんでだめなんだろう。
『エイリア石、』
あーあ、半田はばかだなあ。鬼道に告げ口しよっかなあ。多分、ていうかきっと怒られるだろうけど。
『強く、なりたくないか? エイリア石を、欲しくないか?』
あーあ、頭の中をぐるぐる回り始めちゃったよ。うざいなあ、さっさと消えてくれないかなあ。
なんでそんなに強くなりたいと願うのだろう。僕にはわからないや。ごめんね、半田。
だって僕は何でもできるもの。サッカーに全てをかけてたわけじゃないもの。生憎僕は、器用なんだよ。
『松野、強くなりたくないのか?』
あーもう知らない。僕にはサッカーだけってわけじゃないんだから。ったく、半田はいつでもうるさいなあ。
力に溺れた醜い魚は、もう黙って死んでればいいのに。
- 貪欲な君に憐れみを
「私はもう、死ぬからな」
淡々とウルビダは告げた。ああ、やっぱり死んじゃうんだ。まあ、屋上に呼び出された時点で覚悟はしてたけどさ。
疲れたんだと思う。ジェネシスの称号の争奪戦に。それは僕も同じだ。いやでも人間って醜いということを思い知らされる。
いっそ、死んだほうがマシかもね。
「ねえウルビダ、どんな死に方が綺麗かな」
「なんだ、お前も死ぬのか」
「……まあね」
微笑を浮かべてそう返すと、ウルビダも珍しく笑みを返してくれた。可愛い素直な笑みだった。
ウルビダが無言で僕に手を差し出した。手を伸ばした、というのじゃなく、手を差し出していた。
その手に触れようと僕も手を差し出そうとした。けど、ウルビダの体はもう既に僕の視界から消えていた。
「置いてかないでよ」
ウルビダと一緒に死ねるなら、どんな死に方でもいいや。それが多分、一番綺麗な死に方だろうし。
- 綺麗な死に方