二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【涼宮ハルヒの憂鬱】[*.団員キョンくんの困惑.*] ( No.14 )
日時: 2010/07/29 12:03
名前: むく。 ◆Y1ybAG.6mU (ID: vehLH22f)

* プロローグ-2


その少女が手にしているのは紛れもない、俺の所持品だった。

「あ、俺のハンカチか。ありがとな」

「いえいえ。丁度あなたたちが前に見えたものですから。では、失礼しま——」

手を振って立ち去ろうとした少女の背中にぬっと手が伸びる。そして襟を引っ掴み、

「待ちなさい!」

ハルヒの怒声が辺りに響き渡った。

少し肩を震わせて振り向く少女は不安と恐怖が混ざったような困惑の顔を浮かべている。

おいおい、初対面のやつにそんな態度はないんじゃないか。

俺の注意も華麗にスルー、ハルヒは口元に怪しげな笑みを浮かべ、少女の頭から爪先までを十五秒かけて凝視する。

「うん、あなた可愛いわっ。萌え要素アリアリだし」

なんでそんな自信満々な顔をするんだ。

「も、萌え…?」

「そう。萌えよ、萌え!とりあえずあなた、我がSOS団に入団しなさい」

空を舞う鷹が獲物を捕えたような瞳で少女の襟を握る右手に力を入れる。強引すぎるぞ。

「ちょっと、ごめんなさい。頭の整理をさせて」

そりゃそうだろうな。見知らぬやつに唐突に素っ頓狂なこと言われて、萌え要素があるというだけで入団勧誘され、素直に「はい」なんて言えるやつはいるはずがない。

「まずは名前を聞きましょうか」

まあ、ハルヒが人の話を聞かないというのは分かり切ったことだが。

古泉が周りの通行人に気を遣って歩道の隅へ誘導したところで、

「市瀬歩実です」

律儀にもどういう漢字を当てるのかまで教えてくれた。

「そう、歩実ちゃんね。ツインテールに眼鏡っ子…いいわ!有希もいつの間にか眼鏡かけなくなっちゃったし」

栗色の髪に白い肌、黒く大きな瞳が美しい。愛想よさそうな桃色の唇がきょとんとしたように開かれる。

「えっと…涼宮ハルヒさんですよね?あなたは朝比奈みくるさん、長門有希さん、古泉一樹さん…」

最後に俺へ、滅多に呼ばれることはない本名を告げた。

「言ってしまいますと、変な連中だから近寄るなって先輩から言われてたんですね。でも私にはそうは見えないので」

「あなたって一年?入学して一日しか経っていないのに、もうあたしたちの名が知れ渡っているのね。SOS団も知名度を上げたものだわ」

いろいろとショックだがな。

「宜しくね、市瀬さん」

「はい、朝比奈先輩」

朝比奈さんと市瀬は手を取り合って笑っている。

「楽しそうでなによりだが、入団する気満々だな。後で後悔しても知らんぞ」

「ええ、おもしろそうですし構いませんよ。皆様さえよろしければ」

「いいんじゃないでしょうか?僕も新しい後輩ができて光栄ですしね」

古泉の笑顔に顔を赤らめる市瀬。付き合うならこいつはマジでやめとけ。

俺の目を見て何を察したのか、市瀬は子供のように笑った。

「じゃあ明日の放課後、部室にきてちょうだい」

ハルヒは酸素を口一杯に吸い込み、

「来ないと死刑だからっ!」

お決まりの台詞を吐いた。