二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【稲妻・ボカロ短編集】翡翠の波紋【リク求む】 ( No.156 )
- 日時: 2010/08/16 19:50
- 名前: 氷橙風 ◆aeqBHN6isk (ID: yjS9W/Zh)
+*無垢な彼女と純正な彼*+
今は一月。学校はとうに終わり、冬休みを堪能している生徒が多いと思われる時期。
吹雪は円堂達とのサッカーの練習を河川敷で終え、帰途についていた。
(やっぱり家にいるよりはサッカーした方が楽しいな)
そう思いながら、吹雪は寒さで白くなった息でかじかむ手を温める。さっきまで運動していたのに、あっというまに寒くなってしまう、そんな気温だった。
真っ白なマフラー——『あの』マフラーとは違う——に顔をうずめた、その時。
「士郎君!」
後ろから突如、吹雪に声がかかった。
どこか聞き覚えがあるその可愛らしい声に、考えるのより先に振り向く吹雪。
「……沙良ちゃん」
少し驚いたような吹雪の薄青の瞳には、以前いた白恋中のサッカー部マネージャー、——園雪沙良が映っていた。
**
吹雪と沙良以外、誰もいない小さい公園のベンチ。
雪がのっているかのような、一部が白い、肩までの水色の髪に、吸い込まれそうな黒い大きい瞳。真っ白な肌に映える、頬と同じ薄桃色の小さい唇が、嬉しそうに言葉を紡いでいた。
「今学校お休みだから……東京に旅行に来たんだ。士郎君に会いたいっていうのが一番の理由だけど。元気そうでホントによかった」
今までの気持ちを一気に吐きだす、というような勢いで早口になる沙良。そんな小柄な彼女の頭を、吹雪は優しくなでた。
「まさかわざわざ来てくれるなんて思ってなかった。いつも手紙ありがとう、毎回楽しく読んでるよ」
「……うん」
なでられて嬉し恥ずかしいのか、沙良の頬がますます赤くなる。そして吹雪の目をまっすぐ見ながら、また小鳥のような高い声で喋りはじめた。
「あのね、あの手紙はね、みんなで文面考えてるんだよ。珠香ちゃんも紺子ちゃんも、烈斗君も流君も礼文君も、みんな士郎君に会いたがってたよ」
「そっか。……みんな元気?」
「うん、元気! あっそういえばね、この前烈斗君のお誕生日だったんだよ。みんなでお祝いしたんだ! 楽しかったなあ」
これ以上ないというほどの笑顔の沙良の言葉に、吹雪は脳裏に白恋中のメンバーが蘇る。懐かしいと思うと同時にまた会いたいとも感じ、どこか寂しそうな表情になった吹雪の顔を、心配そうに沙良が覗き込んだ。
「ど、どうしたの? わ、私、なんか嫌なことした?」
「……あはは、違うよ、……本当に沙良ちゃんは変わってないね」
「……?」
さっきまでの笑顔とは一変、不安げな沙良を見て、吹雪はなぜか笑ってしまった。
——そういえば、チームの雰囲気が暗かった時、いつもこうやってまた明るくなったんだっけ。
そう思うと、ますます白恋中が恋しく感じる。
吹雪はゆっくり瞬きをすると、にこりと沙良に微笑みかけた。
「決めた。僕、冬休み中に絶対そっちに行くからね。沙良ちゃんが会いに来てくれたんだから。それに、氷上君にプレゼントあげなきゃ」
「えっ……ホント? ホントに来てくれるの? 絶対? 約束してくれる?」
一瞬とまどいながらもぱあっと顔が明るくなり、しかしまだ不安そうにか細い声で吹雪に問いかける沙良。
「うん、約束するよ。指きり、する?」
「……ううん、士郎君がそう言うなら、私信じる!」
今度は本当に笑顔になった沙良を見て、吹雪はよかった、と安堵の溜息をつく。
「そうだ、私士郎君が来るまでに、てぶくろつくっておくね! 手、寒そうだから……」
「……ありがとう。やっぱり優しいんだね」
「そんなことないよ! ……あ、もうそろそろばいばいしなきゃ」
え? ととまどう吹雪に、お母さん達が待ってるから、と沙良は少し哀しそうにし、それでも元気よく立ちあがった。
「烈斗君は、士郎君が来てくれることが、一番嬉しいプレゼントだと思うよ」
そう言い残して出口に走っていく沙良に、吹雪はまだとまどい、話しかけることができず——それでも、向こうで手を大きく振っている彼女に、手を振り返すことだけはできて。
沙良の輝かしい笑顔を心に浮かばせながら、小さく微笑んだ。
(夢のように消えてしまった時間)
(でもまたきっと、取り戻せるだろう)
+
なんかgdgdな感じですが……とりあえず沙良ちゃん大好き((
題の「純正」は、まじりけがない、本来の物とかいう意味もあるようで。アツヤと統合したふぶきゅんにピッタリじゃんとか……すいません。
女子組はベンチですが、きたみと烈斗はめっちゃ活躍しております。ブリザードで。礼文は一度引き抜いたけど人数の限界で……orz
それではっすみませんでしたー。