二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【稲妻11・ボカロ】翡翠の波紋【短編集】【リク受付中】 ( No.184 )
- 日時: 2010/08/22 11:32
- 名前: 氷橙風 ◆aeqBHN6isk (ID: yjS9W/Zh)
+*拒絶と切望*+
ぼんやりとした頭の中に、突然自分の名前を呼ぶ誰かの声が響いた。幻聴なのかな、もう終わりなのかな、そんなこと思ったけどまだ聞こえてくる。思わず顔をあげると、ぐしゃぐしゃのぼやけた視界には、自分が拒絶しているようで苦しいほど求めていた源田が映っていた。
「どう、して」
驚愕となにかの崩壊に対する惧れで、もう声などでないと思っていたのに酷く掠れた呟きが自分の口からもれる。
見られたくなかった。こんな姿を。源田だけには見られたくなかったのに。何本もの紅い線が刻まれている腕や手首、首の気持ち悪い青い痣。壁にぶつけてできた傷だらけの額。
自殺行為に近いこんなことをしているなんて、源田だけには絶対に知られたくなかった。心配させたくなかったから。それに、やっと決めることができたのに、また振り出しに戻ってしまう気がして。
源田は何も喋らなかった。紐がそこらじゅうに落ちていて、壁にいくつもの紅い斑点があって、カッターナイフを握りしめた俺を見ても何も喋らなかった。ただ、優しくて哀しそうな色を瞳にやどして、俺よりも本当に辛そうな表情をしていた。
「こないで。なあ、来ないでくれ。お願いだから」
眼を伏せる寸前、無言で近寄ってくる源田が見えて、ふれられたくないと本能的に感じ、自分でも弱々しいと思う細い声で、それでも必死に願った。
あの源田の本当に温かい眼差しと手は愛しいのに、拒絶してしまう。怖かった。怖くて怖くてたまらなかった。もう脆くて、息を吹きかければすぐに消し飛んでしまうような今の俺は、独りでいたかった。
「佐久間、」
「こないで、」
眼をつぶってうずくまって、またいつものようにあふれてきた生温かい涙で服を濡らして、やっと口を開いた源田をただただ拒絶した。そうしないと今にも自分が壊れてしまう。
「……佐久間」
壊れてしまう壊れてしまう。やめてやめてやめて。もう声もでない。源田の穏やかな声を聞くだけで、どんどん自分の心が崩壊していく。
「なあ佐久間、俺はお前の気持ちはわからないけど、」
やめて、やめて。やめてやめてやめて。お前がなんて言うかわかってたから、この馬鹿でお人好しで、誰にだって優しいお前がなんて言うかわかってたから、だから拒絶したのに。聞きたくなかったのに。優しすぎるお前の言葉は、俺を完璧に壊すには充分すぎるから。
「俺はお前と一緒にいたい。死んでほしくない、絶対に」
そっと俺の小さい肩に手をおいて、耳元でそう囁いて、ほら、壊れてしまう。嬉しいのに、その嬉しいという感情が兵器になる。もう何も考えられない。やっと決断したのに、すぐに揺れてしまう俺が嫌で、揺らしてしまう源田がどこか怖かった。それでも涙だけは、ずっとずっと止まらない。
「やめ、て、こわれる、もうやめて、でてって」
「壊れるんなら俺が守るから。壊れたんなら俺がなおしてみせるから」
どうしてどうしてどうして、どうしてそんなことが言いきれるんだ。断言できるんだ。だいたい、壊したのはお前じゃないか。その優しさが、俺を壊してしまったんじゃないか。俺の心にとって優しさなんて、刃物以外の何でもないのに。
なのに、なぜその苦しい優しさを求めるのだろう。どうして、どうして、ナイフを手放して源田にしがみついてしまうのだろう。
「守れなかった、守るって決めたのに。守れなかった、だからせめて」
痛切な悔しさが手に取るようにわかる、そんな源田の言葉が俺を絞めつけて、でも素直に嬉しかった。
「ありがとう」
けどなやっぱり、無理なんだ。これ以上ここに存在していたら、耐えきれないんだ。お前と一緒にいられないんだよ。耐えるには酷すぎる痛みなんだ。
「ありがとう、ごめん」
片手を源田から離して、手探りでアレを探す。冷たい感触があって、なぜか口元があがった。
「ごめん、ごめん。今までありがとう、ホントに嬉しかった」
「佐久間……?」
ゴメンなさい。こんなことしちゃいけないのはわかってるんだ、でもこのままじゃお前まで巻き込んでしまうのは目に見えているから。
小型のカッターナイフを、強く握りしめた。
+
思いっきりBLじゃねえか……と思いましたよ、ええ。
だいたい記念と何の関係が? はい、記念と言っときながらまったく記念っぽくないです。まあいいですよもう。(タヒね
ゴメンなさい……自分でもなにやってんだと思います。ホントなにやってんでしょう……
じゃあまあとりあえず解説っぽいものを。
※あくまで二人の関係は友達、親友です。
佐久間はいじめられてたかなんかで、人が苦手というか大嫌いでした。
それで、源田には心を許すというか、源田特有の優しさに溺れていたけれど、その優しさがだんだん辛くなってくる。
自分には似合わないと思い始め、悩み、苦しくて死んでしまおうと自虐行為をするようになる。
そしてその現場を源田に見られ、死のうと決意したのにだんだん揺れて、やっぱりその優しさが苦しくて、でも嬉しくて、ありがとうありがとうって言っても、やっぱり、
と。
カッターを握りしめて、どっちに刺したんでしょう。それはみなさんのご想像に。
それではっお目汚し失礼いたしましたっ!