二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 永遠に欲求(いつまでも愛してる、) ( No.509 )
- 日時: 2010/10/11 19:14
- 名前: 氷橙風 ◆aeqBHN6isk (ID: yjS9W/Zh)
+*永遠に欲求(いつまでも愛してる、)*+
脇腹が押し潰されるような衝撃に襲われ、胃から不快感の塊が喉に逆流する。思わず咳き込むと、ぐらり、と歪んだ視界の隅に赤い飛沫が飛ぶのが映った。薄いTシャツがゆっくり何かに染まっていって、肌にべったり貼りつく。気持ち悪い。……ああ、血を吐いたのか、あたし。
蹴られたのかな、殴られたのかな。どっちにせよ、暴力、だよね。でも別に構わないよ? だってこの人は根本ではあたしを欲してる、ってことだもの。本当に嫌いなら近づいたりしないもの。どんな形であれ大好きなこの人に求められてるんだから、あたしは痛くなんかない。そりゃあ体はとっくのとうに限界だけれど。どんなに蹴られても殴られても、あたしの心が壊れるなんてことないんだよ、ね、不動! 壊れるなんて、有り得ないの。あたしは不動のこと大好きなんだから。そして不動はあたしを求めて、くれてるんでしょ? そうなんでしょ、そうだよね。
確かめたくて、勿論不動が答えてくれるわけないんだけど名前を呼んでみる。……駄目だ、やっぱり上手く声がでない。感覚がない。こんなに大好きなのに、なんであたしの体はちゃんと動かないのだろう。立て、って命令をだしてももう力が全てなくなったみたいで、空っぽの身体は壁に沿って床に座り込む。
だけど、だけどあたしの体が壊れたって、不動を愛してることに変わりはない。不動がどんなにあたしを痛めつけたって、あたしは変わらないよ。ね、そんなこと不動だってわかってるでしょ? わかってくれてるでしょ? そうじゃなきゃ、あたしどうすればいいの?
自分でもよくわからない感情が一気に混ざり合って濁った色に変わる。口元が上がっていた。わからない薄笑いだけど、ただ虚しさがあるものだというのはなぜか明確にわかっていた。
「ッ、こわ、れろ」
不動の翡翠色の瞳が歪み、どこか悔しそうに言葉を吐き捨てる。
壊れろ? 嫌だよ、いくら不動のいうことだってそれは嫌だよ。だって心まで壊れてしまったらもう不動を愛せないでしょ? ちゃんと愛することができないんだもの。嫌だよ、絶対。
そう思ってたら、あれ、頬が熱い。熱くて熱くて熱くて、何かが、くだけた? 痛い、いたい。暗くなったり明るくなったり、ネオンのようにちかちかする視界に映るのは大好きな不動じゃなくて何もない空間。体が浮遊感に包まれた感じがする。ふわ、ふわ、感覚を失って、でも大丈夫、これはいつものことだもの。もう少ししたらまた元通りに直るはず。また元通りに、不動を見ることができて愛することができる! そう考えたら、頬が段々べったりしていくのも気にならなくなった。
「壊れて壊れて壊れて、泣けばいいだろッ! さっさと泣いて崩れろよ、苦しいんだろ?!」
でも不動は怒っているようだ。あたし、いつも不動を怒らせてばかりだなあ。なんでだろ、あたしは不動を愛しちゃいけないの? いけないから、怒ってるの? だけど不動を愛することができなくなったら、あたしはここに生きている意味なんて、ない、のに。
泣く? 泣く? 泣く、涙? ——嫌だ、泣いたらそれは不動を否定することになってしまう。嫌だよ、いや! 否定なんてしない、不動はあたしを求めてくれてる。嫌っているけれど求めてくれてるんだから、否定なんてしない、拒絶なんてしない。ずっとあたしは不動を愛し続けるの!
肩に何かが食い込んで、肉が微かに悲鳴をあげ、生温かいような液体が穴のあいたところから滲みでる。
——不動は、あたしを求めてる。そう、絶対そう。あたしを傷つけて、痛めつけていても、そうなんだから。違ったら——違ったら、あたしが全部思い込んでいたのだったら、そしたら、? そんなことを考えると身体だけじゃなくて心まで空っぽになった。……駄目だよ、あたし不動を愛することだけは忘れない、空っぽになんてならない。
「い、……や、」
首を横に振ってみせたかったけど体は動かなかった。だから、笑ってみた。貴方を拒絶することなんてあたし絶対しないからね、って。
〝今日も愛していいですか、〟
+
けんかっぷるでしたー。あきおと誰か。まあ予想はつくと思いますが。