二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【稲妻・ボカロ】翡翠の波紋【気まぐれ短編集】 ( No.54 )
日時: 2010/07/20 21:39
名前: 氷橙風 ◆aeqBHN6isk (ID: yjS9W/Zh)

+*欲望の薔薇は狂気と化した*+


平凡な家。平和な空間。普通の廊下を、楽しそうに浅葱色アサギイロの髪を揺らして歩く女。
しかし彼女は、背後の物陰に潜む銀色のきらめきに、気がつくことはなかった。

そして平和は一瞬にして崩れ去る。


「いやぁぁぁあああああっ!!」
「!! ミクっ?!」

レンの愛しい人——、ミクのつんざくような叫び声に、レンは振り返る。その透き通った青い瞳に、驚愕と不安の色が浮かび、彼は唇を噛み締めると急いで声の方向に走った。


「……ッ!! み、ミ、ク……」

レンは口元を押さえ、信じられないというような眼で彼女を見る。否、すぐに目線をそらしたかったが、彼にはそうすることができなかった。
レンの視界に映ったもの——それは、ミクの切り落とされた白い両腕。心臓に垂直に突き刺さっている、血まみれのナイフ。髪と同じ色の眼を見開いたまま動かない、血の気を失った顔。
一般人であったレンには、あまりにも酷な光景だった。
そしてミクをそんな姿にした犯人が誰か。その思考は簡単につながる。
なぜなら——

特に驚きもしないで、ミクの心臓からナイフを躊躇せず抜き取った、レンがよく知る人。
リンが、笑みを浮かべて目の前に立っていたからである。


「くすくす、こんにちは、レン」

彼と同じ綺麗な金髪は、血で汚れ真紅に染まって。彼と同じ青い瞳は、レンとは違い、どこまでも沈み込みそうな濁った瞳だった。
その濁りは、彼女の歪んだ愛情と欲望のあらわし——。

レンは必死に逃げようとする。それでも身体は動かない。まるで、足首を誰かに掴まれているかのように。それならと、口を動かしてみる。しかし何の言葉も発せられない。まるで、誰かに声を抜き取られたかのように。
それらは全て、レンの恐怖心から生まれる現象だった。

「ねえレン。哀れな姿だと思わない? あんなに綺麗だった髪の毛も、ほら、真っ赤っ赤。汚いよね、そうよ、コイツの血はこんなに汚いのよ。——そういえば、貴方がコイツを選んだ理由も、この髪が一つだったっけ」

リンは血まみれの手で血まみれのナイフを握りながらレンに近づく。当然レンは逃げることはできない。恐怖心に加え、彼女のえぐるような視線に引っ張られるのだ。

「でも仕方ないよね、こうなったのも。貴方の愛しい人がこうなったのも。貴方が、私を見てくれなかったから、愛してくれなかったから」
「ち、違う……「言い訳はやめてよね」

やっとでたその短い言葉は、あっけなくリンに消される。

「私を一生、死んでも愛してくれるって言ったじゃない。あんな簡単に破るとは思わなかったわ。私は貴方のこと、今でも愛しているのに。ホント、
殺したいぐらい、ね」

リンは、瞬きもせずに、じっとレンの顔を見続けながら話を続け——
嫌な静けさが一瞬、しかしレンにとってはゆっくりと起こった。リンの手が素早く動き、ナイフが銀色に光る。ソレは、レンの腹を切り裂いた。

「くっ……う……」

ようやく呪縛から解き放たれ、けれどもう彼には逃げるほどの力はない。レンは手で腹を押さえるが、その裂けたところはレンの手よりもずっと大きく、血がだらだらとこぼれ落ちる。

「痛い? 怖い? 大丈夫だよね、だって私がやってあげたんだもん。ふふ、心配しないで。すぐに私も逝くわよ。貴方の死に顔、じっくり見届けた後でね」

喋ることもできない激痛がレンを襲い、だんだんと意識も薄れる。リンの言葉は、耳に直接囁かれても彼に届くことはなかった。
そして————



「あははははははっははははっはははああはははああはははあははっはははあははははあ!!!!!」

壊れた人形のように、リンは叫び声をあげる。その中には、かすかに歓喜も混じっている。

「これで、永遠に貴方と二人きりだね」

満足そうにレンの顔を見るリンは、その手に持っている血と狂気に塗れたナイフを、自分の首に突き刺した。


(貴方は私から逃れられない)

真っ赤に染まった薔薇は、狂気に覆い尽くされる。




たまにはリンも良いよね。ヤンデレさん。
なんかいろいろとすまそです。御気分を害された方がおりましたらお申し付けください。……謝罪しかできませんが。

解説☆

レンとリンは付き合ってました。しかし、レンはミクのことが好きになり、ちゃんと話し合いをして、リンの合意も得たうえで別れました。
だがあ! リンはやはり納得できず、レンを独占したいという欲望から、病み化します。
そして……

という話です。わかったかな?((わかんねぇよ

次はプロミネンスのあの2人にするかな……いやでも予定です。