二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 紫奔様リク ( No.562 )
日時: 2010/11/04 17:30
名前: 氷橙風 ◆aeqBHN6isk (ID: yjS9W/Zh)

+*君の笑顔が暖かい*+ 

「さむー……」

 ぶるぶるっ、と杏が華奢な体を震わせた。
 
 冬の寒い日のこと。杏、晴矢、風介は、風邪で寝込んだクララを看病しにクララの家へと向かっていた。
 体を切り裂くような鋭い風。手足を痺らせるほど冷たい空気は、杏達を容赦なく取り巻く。一応晴れてはいるが、冬の夕方というあたたかさを感じられない日光はなんの役にも立たない。
 クララの家までもう少し。だが、マフラーなどをつけている晴矢や風介とは違い、薄めの服装で来てしまった杏はもう限界を越しそうだった。
 うまく動かない手を、必死になって息で温めている様子を見た晴矢は、普段喧嘩ばかりしている仲とはいえ心配になり。

「杏、マフラー貸そうか?」
「……いらない」

 自分のつけている橙色のマフラーを緩めながらそう聞いても、杏からまともな返事は返らずただ首をゆっくりと横にふるだけだった。いつもならブンブンと勢いよくふっているところが大人しめなのはあまりに寒いからだろう。

「……強がんなよなぁ」
「だ、黙りなさいよ」

 つまらなそうにはぁ、と溜息をついた晴矢をきっ、と杏が睨む。やはり、いつもなら蹴っているというのを考えると、杏は口には出さないが相当参っているようだった。

(扱いにくいことこの上ねーよ……)

 こうなったら杏は意地でもうんとは言わない為、晴矢の溜息はさらに深くなり空中に白くぼんやりと映る。素直に聞いてくれないことへの苛々もあったが、杏も風邪をひいてしまうんではないかと真剣に心配もしていた。
 そんな晴矢を、いや二人を見て、風介は面白そうにくすりと笑うと前を指差した。

「ほら、もう着いたぞ」

 だいぶ薄暗くなってきた中で、明かりが灯っているクララの家に着いたということは杏にとってかなりの安心を与えたのだろう。心なしかきつめの表情が緩んだようだった。

**

 クララの部屋に三人が入ると、クララは体を横にしたまま首だけ動かし、少し驚いたような表情を見せた。

「……寒いのに来てくれたんだ、ありがと」
「ううん、クララは大切な友達だしね!」

 どこか申し訳なさそうなクララに杏はにかっといつも通りの明るい笑顔をつくる。部屋は心地よい程度に暖まっていて、手足にまとわりついた外の冷気が溶けてきたからだろう。
 風介がベッドの横にあるサイドテーブルに果物の入った袋を置く。几帳面な風介らしく、晴矢ならどさっと音がするが丁寧に置かれた袋はかさりとしか音をたてなかった。
 そんな様子を見て、クララは恥ずかしそうに、しかし嬉しそうにすると、不器用ながらに微笑んだ。表情が豊かとはあまり言えないクララは笑うことが少ないが、それでも時折見せる笑顔は儚い花のように綺麗なものだった。

「大丈夫か? もう熱は下がったのか?」

 風介は傍にあった椅子に座って、クララの瞳をじっと見つめながら問う。人に見られることに慣れていないクララは、頬を少し赤らめて目線を逸らしながら小さく呟くように答えた。

「……ええ、明日にはきっと治ってるわ」
「そうか、よかった」

 安堵の溜息をついた風介達に、クララは表情を暗くして俯いた。それもまた綺麗なものではあるのだが、何か言ってはいけないことを言ってしまったのかと慌てる三人をクララはさらに慌てて取り繕う。

「ち、違うの……その、なんか色々悪いなあ、って」

 最後の方は口を濁しながらの言葉に、三人は一瞬驚いたような顔をするとすぐに笑い始めた。びくっとするクララの小さい肩を、風介がそっと掴む。

「何を言う、もっと自信を持っていいんだ。クララは笑顔の方が綺麗だぞ」

 落ち着いた微笑みを向けられたクララは、伏し目がちな青い瞳を大きく開け、戸惑いながらも本当に小さく、よく見ないとわからないほど小さく頷いた。それを見た風介は、さっきよりも安堵したようで、表情をやわらかくし。
 そんな二人の邪魔をしたくないのか、杏は突然ふーっと大きく息を吐き、晴矢の腕を強い力で掴む。わけもわからず抵抗する晴矢の口をむぎゅっとおさえて、にこっと笑った。

「そういえばあたしと晴矢、用事があって! ごめんねクララ、後は風介になんとかしてもらってー!」

 返事も待たずにさっさと部屋を出て玄関まで行き家の外に出る。ようやく晴矢の口をはなし、「何すんだよ」と突っかかる晴矢を杏は軽く睨み、そして誰にも聞こえないほどの小さな声で、ぽつりと呟いた。

「……ばぁか、いつも晴矢は鈍感なんだから」

 え? と素直に戸惑う晴矢から、杏はそっぽを向いて手を無言で出す。

「マフラー、貸しなさいよね」

 いつのまにか空は深い紫色に染まっていて、不思議なほどに綺麗だった。



そうですね、まず包丁を投げようとしているそこの貴方、お願いですから弁解の時間をください。

ほんわかした恋愛……というウッヒャーなリクを受け、ほんわかというものを目指したんです。それがどうでしょう。
なんだか風介がたらしのようで、杏はただのツンデレです。晴矢が鈍感なのはおいといて、クララ様なんてもの凄くキャラが……いや、こういうキャラ私好きなんですy聞いてないですねすみません。
いや、真剣にすみませんでした。え、ちょでも包丁はあれ鉈まで入ってますよどういうことですkあああああああ!

……リク、有難う御座いました。