二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 暖時 ( No.627 )
- 日時: 2010/12/17 22:45
- 名前: 氷橙風 ◆inazumaCHw (ID: yjS9W/Zh)
ぱら、ぱら。
小さく可愛らしい音と共に、次々と本のページが捲られる。そのページはところどころ千切れていたり虫に喰われていたりしていて古ぼけ、そして、難解な文字に埋め尽くされていた。そんなページが何百枚もある分厚い本を、パチュリーはすらすらと読んでいく。奥に何かが潜んでいるかのような、どこか神秘的な紫色の瞳が送る視線は規則的に上下に動いていた。
温かみがある橙色の仄かな明かりだけが、パチュリーの手元を照らす。とはいっても、机に積まれた何十冊もの本がその僅かな明かりを遮っているのだが。しかしパチュリーはそれを気にすることはなく、ただただ視線を動かしていく。
それは慣れているからなのか、それとも彼女が“魔法使い”という種族のためか。なんにせよ、本が大好きでどこでも読みたい彼女にとってそれは好都合なのだろう。
ふう、とパチュリーが息をついた。一冊の本を読み終えたのだ。どんなに難解な本でもあっという間に読んでしまう彼女だが、やはりあれだけ分厚い本を読み終えたら一息つきたくなるものなのだろうか。
しかしパチュリーはただ息をつき、自分の瞳と同じ紫色の髪を重そうに払うだけで、ろくな休息を取ろうとせずまたすぐに次の本へと手を伸ばす。本の傍にいることが嬉しいのか、あまり感情を表さない瞳にもどこか楽しげな色が宿っていた。
が、本を取ろうとした手をぴくりと止め、ゆっくりと後ろに振り向く。特に感情の変化が見られないということは、彼女にとって驚くことでもなんでもなくそれは当たり前だということを意味しているのだろう。
「あの、お紅茶お持ちしました」
「……有難う、こぁ」
やだ、こぁって呼ばないでください。
そう照れ笑いをしながら手を横に振る赤い髪の少女。こぁ——小悪魔という種族の彼女が持ってきた、紅茶が入ったカップは、銀色のトレイの上で机に乗せられている。
パチュリーはやわらかく微笑むと、カップを両手で包むようにして少しだけ口につける。ゆっくりと少しずつ口に含んでいくパチュリーを見て、小悪魔は(持ち方、お行儀悪いなあ……)と感じたが、一応パチュリーは自分より上の立場のため特に何も言わずただにこにこと見ているだけだ。また、“そんな”パチュリーに好感が持てるというのも事実だからである。
「……美味しいわ」
「そりゃまあ、咲夜さんが入れましたし」
「へえ、成程ね」
まだ湯気が上るカップをそっと机に置いたパチュリーは、一言二言言葉を交わすと、さっき伸ばしかけていた手を再び伸ばし、本を手にとって読書に戻った。
パチュリーが何も喋らず黙々と読書を続けるため、必然的に静かになる空間。それでも小悪魔はいたたまれさなどまったく感じない。なぜならそれはいつものことであり、また小悪魔はそんな時間が好きだからだ。
ひたすら本に熱のこもった視線を送るパチュリーの姿を後ろから眺めながら、小悪魔は口元を綻ばせた。
( ゆったりと流れる、 )
+
断じて百合じゃないです。いいですか百合じゃないです。誰もそんなこと言ってない? ……すいません。
題名は「あたたかどき」と読みまっせ。前々回のは「さくらかぜ」前回のは「しんあい」です。わかりにくいですね。
パチュリーが大好きでたまらないです。可愛いです。絶対あの子が紅茶を飲む時は両手で包んで飲むと思います。なんか。←
魔法使いだったら視力が良いのかとか気にしない。ビタミンAとか気にしない。ビタミンAが視力に関係あるのかとか知らない。
ちなみに私はこぁよりここぁの方が好きだったりする。ふはは。