二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 輝水 ( No.634 )
日時: 2010/12/19 19:34
名前: 氷橙風 ◆inazumaCHw (ID: yjS9W/Zh)

 太陽が眩しい、真夏のある日のことである。

「チルノちゃん、落ち着こうよ……」
「えーっ、まだまだ遊ぶに決まってるでしょ!」

 きらきらと日光を反射する、透き通った氷に包まれた——つまり氷漬けにされた一匹の蛙。それを両手でしっかりと持ち、不満そうに口を尖らせて隣の少女を見るチルノ。
 大妖精と呼ばれる種族のうちの一人、若葉のような緑色の髪と澄んだ水のように青い瞳を持つ少女は、呆れ困ったような視線をチルノに向けた。それに反応して、チルノはますます不満げにぷう、と頬をふくらませる。

「いいでしょ、今日はこんなに氷漬け日和なんだから!」
「氷漬け日和なんていう言葉はないし、あったら蛙さん達にとてつもなく迷惑よ」
「今あたいがつくったの! もぉ、大妖精はいちいちうるさいー」

 チルノは肩まである水色の髪をふり乱し、彼女と同じ青い瞳で大妖精を睨むと、ぷいっと顔を背けてしまった。
 大妖精は適当にチルノをなだめながら、どうすれば蛙を助けられるか目まぐるしく思考回路をまわす。とはいっても、チルノをよく知る彼女にとってその答えを探すのは簡単すぎることなのだが。

「ねえチルノちゃん、パンはパンでも食べられないパンって知ってる?」
「ほえ? 食べられないパン? ……ちょ、ちょっと待って、天才なあたいはそれぐらい知ってるもんね!」

 ぴく、と見栄のために振り向き、チルノは慌てて考え始める。明らかに嘘だとわかる言葉に適当な相槌を打ちながら、大妖精はさりげなくチルノの手から氷を落とした。真下の湖に落ちていく氷の塊は、大妖精のつくった緩やかな風によってゆっくりと着水する。
 ぽちゃん、と小さな音がはねるのも耳に入らず熱心になぞなぞの答えを考えるチルノを見ながら、

——さすがチルノちゃん、一つの話をしていたらそれしか考えられなくなるんだから。

 大妖精はそう心の中で呟くと、くすっと笑った。


( 涼しげで明るい、 )



「きすい」。造語にもほどがある。
えーと、まあつまり大ちゃんとチルノってことで。大ちゃんはこぁ同様超脇役ですけど可愛いです。
風を操るってのは一次設定じゃないですがお許しください。