二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 罠にかかったウサギちゃん ( No.659 )
- 日時: 2011/01/07 14:54
- 名前: 氷橙風 ◆inazumaCHw (ID: yjS9W/Zh)
- 参照: 趣味丸出しですよ妄想もいいとこですよ!
「ちょっと待てこれはなんなんだ」
「見ての通りですね」
「見てわかんねーから言ってんじゃねーか!」
大きく長い白いもふもふの二つの耳が、ぴょこぴょこと揺れる。それは明らかに作り物だとわかるウサ耳なのだが、本物と同じ……否、本物よりも可愛らしいかもしれない。そんなウサ耳をつけた少年——
佐久間は、けらけらと愉快そうに笑っている成神に大声で怒鳴っていた。
「いやあ、いいじゃないですか。ほら卯年ですし、佐久間先輩も良い思い出をつくれますよ」
「本音は?」
「写真を大量に撮って佐久間先輩のファン達に売りつけます」
「よしカメラを寄こせ」
「いえ、もう依頼は受けてるんで無理です」
「……誰から、だよ……」
やはり恥ずかしいのか少し頬を赤く染めながらも、その橙色の目はきつく吊りあがり、自分をこんな——睡眠薬を仕込まれ眠っている間に椅子に縛られてウサ耳をつけられた——状態にした成神を懸命に睨んでいる佐久間。
だが成神はまったく佐久間の怒りを気に留めていない。それどころか『そーゆー表情も売れるんだよなー』とむしろ喜んでいるようにも見える。とにかく成神の(佐久間をいじって)気分が良いことに変わりはなかった。
「……ていうか、だいたい俺男だぞ!? アイドルとかならまだしも、男にウサ耳付けて誰が喜ぶんだよ!」
「喜ぶ人がいるからこうやってるんじゃないですか……佐久間先輩は物分かりが悪いですねー」
「うるさい! とにかく紐とこれを外せバカ!」
もし紐で縛られていなかったら完璧に暴力の一つはしていただろうと思われる怒りっぷりにも成神は全く動じず、面白そうに笑っているだけだ。
佐久間は恥ずかしさとプライドも相まって相当苛立ってきたのか、自由な足を使って成神に蹴りを入れようとする。が、成神は自由に動けるのだから当然その蹴りが当たるわけもなく、威力はあるとはいえまったくそれに意味はない。
ぷるぷると震えながら『二億代先まで呪ってやる』とでもいうような恨みのこもった視線を向けられた成神。すると、成神は何かを思いついたのか、少しだけ思案顔になり、そしてにこっとわざとらしく明るい笑顔を見せた。
「そんなに嫌なら、紐外してあげますね」
「……へっ?」
急に態度を変えられたからか戸惑う佐久間をよそに、成神はするっと紐を解き、
佐久間を部室の外に押し出した。
「え……ちょ、成神?」
戸惑いながらも後ろを振り返るが、もうドアは閉まっていて成神が何を考えているのかはわからない。
だが(……まあ、これ外せばいっか)とすぐに考えを変え、とりあえず最優先事項を行おうとした、が。
「…………さく……ま?」
ふっと後ろに気配を感じ、慌てて前——ドアの反対側——を向くと、佐久間の目に少々引きつった顔をしている源田が映り。
引きつった——というのも当然であって、いきなり自分の友達がウサ耳をつけていたらそれは驚くに決まっているのである。ましてやそれが佐久間なのだ。
「……えっと……別に、俺は良いと思う」
「ちょ、待て! てめぇ何勘違いしてんだこのアホ!」
「いやその、佐久間は佐久間だからさ」
「てめっ……あーもーっ成神はかったな……!」
引きつりながらもいつも通りに優しく笑顔でいる源田。恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら弁解をし、成神を心の底から恨む佐久間。そして成神は、佐久間が寝ている間に撮った写真を手に、笑い転げ。
そんなこんなで——佐久間にとっては最悪の、年明けだったのだった。