二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【稲妻・ボカロ】翡翠の波紋【気まぐれ短編集】 ( No.90 )
- 日時: 2010/08/01 19:17
- 名前: 氷橙風 ◆aeqBHN6isk (ID: yjS9W/Zh)
+*嘘の自己嫌悪だというの?*+
「もう、嫌だよ——……」
もう外は真っ暗。完璧に夜中だというのに、カーテンも閉まっておらず、弱々しいランプがついているだけの部屋で、少女——ミクは独り呟いた。
まるで放心状態のような彼女が寝っ転がっているソファには、大きな水玉や小さな水玉模様がたくさんあり、また一粒水玉模様ができる。
「死にたい死にたい死にたい。嫌だ、消えてしまいたい。私という存在は、こんなみじめで醜い存在は、消し飛んでしまえばいい」
ミクは緑色の瞳を赤くしながら、独りの空間で呟き続ける。広く天井が高いこともあり、あっけなくその声は部屋に吸い込まれた。けれどミクの震える口は止まらない。また、曇った瞳からあふれでる涙も止まらない。
「大っ嫌いみんな大っ嫌い。誰も私のことなんて理解してくれない。できるわけもない。それなら私なんて生きてる意味ない。死んじゃいたいよ……」
『じゃあ、死んじゃったら?』
「……?!」
突如聞こえた誰かの声に、ミクはピタリと止まった。幻聴じゃないかと自分の耳を疑うが、またもや声は聞こえてくる。
『そんなに自分のこと嫌いならさっさと死になよ。そうしたいんでしょ? 文句ばっか言ってんならさ。自分が今生きていることにも感謝しないで。馬鹿みたい』
「なッ……!!」
ミクはその言葉の意味ではなく、違うことに眼を見開いた。
なにせ、——自分の声だったのだから。
愚痴や不平不満、自己嫌悪の台詞ばかり言っている聞き覚えのある自分の声。ミクは気持ち悪い、と耳を押さえる。
『——また逃げんの? いい加減にしなさいよ。死にたい死にたいうるさいのよ、じゃあさっさと死んじゃえばいいじゃない!! 結局アンタは怖いんでしょ? それでそんなことばっか言って、悲劇のヒロインぶってんじゃないわよ!!』
「ッ……うるさいうるさいうるさいっ、やっぱり誰にも私の気持ちなんて理解されないんだ! わかんないなら黙っててよ!!」
強く耳を押さえ、眼を硬く閉じてミクは自分自身の声にむかって叫んだ。けれどやはり声は止まらなかった。
『そういう態度が逃げてるっていうのよ。理解されない? アンタが理解されようとしてないからでしょ! 独りでばっか過ごして、何もしないで、誰かと仲良くなれることなんてできるわけない! 甘ったれんじゃないわよ!! ……ほら、眼開けなさいよ。鏡、見てみなさいよ』
「……!??」
強い声にミクは思わず眼を開け——口元を手で覆った。
鏡に映っていたのは、口以外顔がない、肌が真っ黒な自分だったからだ。
「嘘、なに、なんで……意味わかんない、……もうみんな……消えちゃえばいいっ!!」
突然のことすぎてミクは何もわからなくなってしまったのか、床を思い切り叩いた。それに対し、あの声は冷静に、冷徹に喋りはじめた。
『そんなこと言ってる暇があれば、さっさと死ねばいいんじゃない? ほら、台所には包丁もある。カッターだってそこにある。ロープも探せばいくらでもある。窓から飛び降りることだって簡単。なのになんで死なないの? 怖いんでしょう? だからでしょう? 貴方はただ構ってほしいだけでしょう?!』
「違う違う違う違うっ、私はっ、私は……!!」
壊れた人形のようにミクは首を横に振り続ける。
『自分ばっかり正義だと思ってる。自分が正しいと思ってる。自分に友達がいないのは、周りがおかしいからだと思ってる。自分はなにやっても許されるって、そう思ってるんでしょう?』
「……れ……。だまれ……黙れぇぇぇえぇええぇええ!!!」
ナニカのネジがはずれ、そうミクがありったけの声で叫んだとき——部屋に静寂が訪れた。
自分の叫びの余韻しか頭に聞こえない。自分を苛立たせるあの声は聞こえない。
「き、えた……?」
鏡を見ても、さっきのおぞましい自分はない。
ミクはほっとすると同時に、怖くなった。何かの前兆じゃないかと、体が急に震える。
もう一人の自分なのだろうか——あの声が言っていたことは、まだ全部頭に残っている。それは、決してミクが受け止められることではない。否定ばかり繰り返す。
「死にたいのなら、死んでしまえ……?」
ミクは、静かになった部屋で、ポツリ、と声を漏らした。
かすかな月の光が、ミクの曇った瞳を照らす。
+
なんだったんだろう……
バッドエンドかハッピーエンドか、それは皆さんのご想像に。
私としては、このミクは>>81のミクが鬱った結果、というものだと思ってくださったら。
なんか「死にたがり」みたいな感じですね……
あの曲大好きです。最後の厳しいデレがぐっときますね。
みんな、自殺は絶対にダメだよ。例えなにがあったとしても。取り返しがつかない行為なのだから。
次はガゼクラの予定です。