二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 雲雀&薄桜鬼 ( No.115 )
- 日時: 2010/10/23 15:19
- 名前: 愛恋 (ID: UDcUxrh6)
薄桜鬼
第壱七話
ゆかりを借り部屋まで送っていき、先ほどの広間へと戻ってきた。
「ご苦労だった、山崎。」
副長からのねぎらいの言葉をもらい、席に着く。
周りには、幹部が勢ぞろい。話の内容は分かっている。
「…そうですね。まず、俺とゆかりの関係ですが…。」
言われる前に言ってしまおうと考え、大まかに説明を始めた。
俺と、ゆかりとの関係。
それは……一種の“主従関係”。
ゆかりは、仲間といい。主従関係とは認めてはいないが、そういうことになっている。
勿論、上がゆかりで。俺は部下の立場だ。
そして、技のこと。
正式には、“言の葉一族伝来言の葉精霊の技術”という、長い名前なのだが。ほとんどの場合は、技、もしくは術と、短縮されて呼ばれている。
普通に話していてもばれないように、というためもあるらしい。
そして、それをあやつるものを“言霊使い”といい、俺もその一人ということになっている。
そして言霊使いは、こちらの世界の人間を表とするならば、裏の人間が作り出した村に生きている。
その村は、全国に点在しそこでの情報集めを行っている。
そして、その言霊使いの長(おさ)というのが
「桜木…ゆかりです。」
「なっ…!!」
今までの話に、口を出さずに聞いていたのに、ここでは驚きのあまり、押さえ切れなかったと思われる。
「あいつは、平助と年齢がほとんどかわらねえ。それに、あいつは…ゆかりは女だろう!?」
永倉さんに言われた一言は、本当に痛い。
「そうですよ。でも、ゆかりは本当に強い。こういうのもなんですが、この中で一番…言の葉使いの中でも一番に強い。」
「ということは、世界で一番強かったりして?」
沖田の一言に俺は黙り込む。
「もしかしたら、そうかもしれませんね……。“彼女”が本気になったら、俺ですらどうなるかなんて想像できません。一番威力が小さい爆発を起こしても、京の町は消し飛ぶくらいですから…。」
っと、適当に話を伸ばしてみた。
あまり深く突っ込まれると厄介なことしか出てこない。思わず口がすべる…なんてことはあってはならない。
「すみません。話がそれましたね。戻します。」
そう、話すことは山ほどある。
しかし、それが氷山の一角でしかないということには、幹部は誰一人として、気づかない……。
*
キレイな月が見える。
部屋に案内された僕…今は、女装中だから私…は外に出て夜風に当たっていた。
髪を撫でる風が心地良い。
すると、右の奥からなにやら気配を感じた……。
振り返ると、そこには烝がいた。
「なんだ烝か。驚かせない…。」
「姫様……。」
真剣な顔をしているから、何事かと思えば。姫様って…。
「先ほどの、口ぶり申し訳ありませんでした。」
「そんなこと?いいのよ、別に。だってそうしなさいって私は、前々から言っているでしょ?だから、これからも“桜木ゆかり”でね?」
笑いかけて、烝の言葉を待っていたのだが一向に返事が返ってこないからしょうがなく、私から切り出した。
「それで、何?烝。土方さんたちにはもう話したの?」
「……はい。話しました。」
「そう…私の身分については?」
「いえ。言霊使いの長ということ以外は話しておりません…。」
安堵の表情を浮かべると、烝と目が合った。
「私の身分を皆さんに言えというの?」
「…いえ…。」
その言葉に、軽く笑みをこぼすと
「嘘が下手なのは、相変わらず…ね。」
「…貴方の前だけですから。仕事では…。」
どうかしら。と返して空を見上げた。
私の身分…それは…。
「徳川ゆかり…か。話すべきときが来たら、話すわ。それまでは、話せない…いえ、話したくない。」
徳川の血がこの中に宿っていること。思いっきり、姫という扱いなのだけれど…。
「そうですか。姫様が決めたことならば、口出しはいたしません。しかし…。」
「分かってるわ。記憶のことでしょう?そのことは、話さなくてはいけないわね。綱さんのこともあるしね…。」
記憶…それは私にとって鎖のようなもの。戒めのようなもの。羅刹と私との関係を表しているもの。
「異常な記憶力って…こういうときにとって厄介よね…。」
「嫌味にしか聞こえませんよ?」
いつもの烝に戻っていたので安心した。
「嫌味?そうかもね。でも、見たり聞いたりしたものを全部記憶してしまうのは辛いものよ?」
苦笑いを浮かべると、烝は一瞬だけ笑ってくれた。
「変若水の研究はもうやめてくださいね。それと、完全な変若水の生産、その方法を教えたりするのは…。」
「わかってる。心配するな!僕はこれでも強いし、それに…。」
そこまで言うと、烝に背を向けた。そして、一呼吸をすると、顔だけ向け
「烝がついてるし!」
「何も出ませんよ。」
「期待してないから。」
そういうと、烝はまた顔に笑みを浮かべた。ここ、新選組にきてよく笑うようになったんだろうか?烝は…もう大丈夫だ。
「そうだ、ゆかり。僕って言うのもやめなさい。」
お母さんか…と幾度となくおもった。
「はいはい。分かった、わかった!明日から男装してても、そういうから!そうかっかするな。」
そうなだめて、私と烝は自分の部屋へと帰っていった。
夜は、どんどん更けていく……。