二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】空は只、青く。 ( No.2 )
日時: 2010/07/18 15:15
名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: mkn9uRs/)

継ぎ接ぎだらけの記憶の中で、
想い出すのは、あの日、あの時の空。

あの日みたいに、空の青を刳り貫いた様な雲を見る度に、何時も僕等は想う。

「 普通の人間だったら 」と。

けれど、僕等の想いは届く事無く、
夏の日の陽射しに溶けてしまった言葉。

此れは大きな夏の青空が見ていた。

僕  等  の  小  さ  な  小  さ  な  物  語



▼sky00、夏枯れ



夏。
僕は見晴しの良い高台から、澄み渡る空をぼんやり眺めている。
僅かに視線の高さを下げれば、懐かしい町、懐かしい景色が陽炎により揺れていた。

「やれやれ、長期出張も楽じゃないな」
「そうですね。此の町も、2年振りでしょうか??」
「うん。僕等が主張に出てから、もう2年も経つんだ。なんかそんな気がしないな」
「そうですか?? 奏はとても懐かしい感じがします。
土方さん達、大怪我とかしてなければ良いですが」
「奏羽」

妙に堅苦しい語り口の少女────陰奏羽に呆れ半分といった表情を向ける。
「土方」という名前が出た時、一瞬自分の唇の端に笑みが浮かんだ。

「皆がそう簡単に浪士にしてやられると思う??」
「あ、確かに」

真選組の皆は、今まで何度も窮地を潜り抜けてきたんだ。
そう簡単に崩れてしまうような弱い人達じゃない事位、僕等はちゃんと理解してる。
そうでしょ??

「はい。申し訳御座いません」
「別に責めたわけじゃないけど。
其れに、特に土方さんなんかは、殺してもタヒななさそうな人だし」
「…………」
「あ、でもさぁ。一番心配してあげないといけないの近藤さんかもね。
今頃妙ちゃんにボッコボッコにされて寝たっきりかも。まぁ、自業自得だど」
「アハハハハ……」

上機嫌に微笑む僕の顔を見上げながら、彼女は返答に悩んでいるらしく、只苦笑していた。
冗談っぽく言ってみたが、近藤さんの事だから有り得るっちゃあ有り得るから、本当に心配になってくる。
毎日妙ちゃんのストー……じゃなくて身辺警護に明け暮れている近藤さんの姿が目に浮かぶ。



「てか……何時見ても、つまらないなぁ」

行き交う人の波を見れば、僕は口癖のように毎回愚痴めいた呟きを洩らす。
其れは何時でも、何処でも共通なのか、主張中も呟いていた覚えがある。
己の愚暗グアンを知ろうともしない人間の哀れな生き様等、興味はなかった。
僕から見れば、其れは滑稽コッケイなだけだ。

「相変わらず時化た顔してんなぁ、雅焔」

聞こえてきた軽薄な声音に、僕は思わず溜め息が出た。
────────やっと来た。

「約束の刻限に遅れておいて、其の第一声が馬鹿馬鹿しい嫌味とはね」

最早怒りより、呆れの方が強い。
僕は振り向き、軽口を叩いた男────彪瀬乙霧に冷たい目を向ける。

「其れに、常に阿呆面のアンタに言われたくない」
「オイオイ、んな怖ぇ顔すんなや。てか此れでも俺、年上なんやから敬う気持ちとか────」
「精神年齢で言えば、断然僕の方が上だから、敬う前に嘲笑っちゃう」
「なんやて、雅焔!!」

僕が言った最後の事実が、如何やらお気に召さなかったらしい。
ぎゃあぎゃあ騒ぐ乙霧の相手等面倒になった僕は、退屈を紛らわそうと空を見上げた。

別に思い悩む程の事ではないのだけれど、どうにも割り切れないものがある。
其れが何なのか判らぬ侭、僕は知らず知らずに、小さく溜め息を吐いていた。

「何、溜め息吐いてんの?? 嫌な事でもあったんかいな」
「う、ううん。別に」

僕は無理矢理笑顔を作りながら答えたが────

「何かあったんですね?? 話して下さい。力に為れるかもしれませんから」

僕の様子がおかしい事に気付いたのか、奏羽が僕に真剣な眼差しで問い掛けてくる。
そんなに真剣な眼差しを向けられると、僕は目を伏せる他無くなる。
変に心配させてしまったか。

「何でもないから、本当。気にしないで」

と、「何でもない」の一点張り。
余計心配を掛ける事は判ってる筈なのに。
何か察してか奏羽は「帰りましょう」と僕の袖を引いた。
理由もなく躊躇ってから、僕は素直に頷いた。


「……あのさぁ、花屋寄ってって良い??」
「良いけど、どないしたん??」
「いやぁ、ちょっと考えたんだけど。もしもの為に、近藤さんに見舞の花でも買っておこうかと」
「オイ、其れ如何いう意味ィィィィィィィ!?」
 
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