二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】空は只、青く。 ( No.3 )
日時: 2010/07/19 16:28
名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: fNW8Dqgc)

————血生臭い。

昔からそう言われてた。
自分では判らなかった、そんな匂い。
昔から嗅ぎ慣れた、一族の匂い。

戦いで疲れ、流れた己の汗と血。
そして、傷つけた相手の血が交じり合った匂い。
其れが自分達の匂いだと知っていた。

そんな匂いが嫌いで、皆離れていった。
自分の一族は独りぼっち。寂しい一族。

でも戦わないと生きていない。
其れは自らの血が言う本能。

本能には逆らえない、

其  れ  が  生  き  物  の  本  能



▼sky01、闇討ち



暑い。
書類整理をしていた彼の額から、何粒か汗が流れていた。
ポタリと、其の内の一滴が書類に垂れて紙が其の水を吸収していた。
書類に汗がかかるのは厄介な為、額の汗を腕でぐしぐしと拭き取っている。
ふう、と溜め息を吐き、再び書類に目を通す。

「あ─……其れにしても暑ィな……」

季節は夏真っ盛りだ。故に暑いのは仕方が無いのかもしれない。
加えて彼の部屋は風通しが悪く、勿論クーラーはついておらず、頼みは扇風機のみ。
扇風機を強にはしてみても、此の室内が暑い為、扇風機の風も生温い。
意味があるのか解らないが、まぁ無いよりはマシなのだろう。

しかし、此の侭では脱水症に為りかねない。
そう察した僕は、黙々とペンを動かす真選組副長・土方十四郎さんの前に、此れ見よがしに湯飲みを置いてみた。

「ああ、すまねぇな…………ッてお前等!?」
「お久、土方さん」

不意に書類から顔を上げた土方さんは、僕等の存在に漸く気付いたらしい。
顔を見るなり、目を見開いて上擦った声を上げた。

「いやぁ。全く僕等の存在に気付いてくれないから、殴り蹴飛ばそうかと思っちゃった」

にっこり微笑む僕に、土方さんは厳しい視線向ける。
しかし、僕は睨まれたって怖くない。少なくとも、今は。
静かな睨めっこの後、土方さんは溜め息混じりに言った。

「帰ってくんのが早ぇんじゃねぇか?? 予定では明日の筈だろ」
「其のつもりだったんですが、予定より早く仕事が終わったので帰ってきました(笑)」
「いや、(笑)じゃねェよ奏羽。つーか笑えるか。じゃあ何で連絡を寄こさねェんだ??」
「皆驚かそーと思って、敢えて連絡しぃひんかってん」

悪戯っぽく笑う僕等に、呆れた表情をする土方さん。
けれど、はっきりと口に出さなくとも、僕等を心配してくれていたんだと思う。
だって、何時もより穏やかな瞳で、僕等の事を見ていてくれたから。


「随分と絵になる光景ですねィ」

不意に聞こえてきた声は、からかいを含んで弾んでいた。
土方さんは其の声を聞いた途端、苦い顔をする。
態々足音を殺して副長室を訪れるような趣味を持つ隊士等、僕と彼以外思い当たらない。

「アハハハハ、総悟もお久し振り」

何時から隠れていたのか、真選組一番隊隊長の沖田総悟は襖の陰から姿を見せた。
そして、楽しげに笑いながら副長室に立ち入る。

「其の侭、向こうに居ても良かったんだぜィ??」
「嫌だよ。其れじゃ土方弄りが出来なくて、僕が楽しくない」
「何お前等本人の前で堂々と悪事計画考えてんだ!!」
「自意識過剰なお人だなぁ。嫌がらせじゃないですよ。ほら、あれ。イジメってやつ」
「尚更、質悪ぃわァァァァァァァ!!」

青筋を立て瞳孔を全開にし、力一杯シャウトした。
鬼の形相とは、こういう事を言うのだろうか。
周りにいた奏羽達が、其の顔を見るなり後ずさりしていた。

そんな顔を見ても微動だにせず、尚も口元を緩ませニヤリと笑う総悟。
爆発寸前の土方さんに追い討ちをかける様に、総悟と一緒に口元を手で軽く押さえ、「プププッ」と笑う。
其の時、プツンと何かがキレたような音がした。

「テメェ等……、今直ぐ此処で叩き斬ってやらァァァァ!!!」

土方さんは刀を振り回しながら、僕と総悟を追い掛け回す。
そんな彼等の背中をジッと見ながら、溜め息を吐く乙霧はフッと小さく笑った。

「やっぱ俺達には、此処(真選組)が一番合ってるわー」
「乙霧さんの意見に奏も同感です。此処が一番、落ち着きますね」


そう。人間誰だって、家が一番なんだ。

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