二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 戦国BASARA弐【月夜の歌姫〜罪無き花〜】 ( No.14 )
日時: 2010/07/24 09:10
名前: ターフ ◆lrnC2c/ESk (ID: 8keOW9sU)
参照: http://yaplog.jp/000331/

第2話 〜企み、正体 PART1〜

「豊臣は潜伏侵略を発動させました。面目ないっす、完全に欺かれました。奴らはかなり前に周到に各軍に伏兵を」

甲斐の丘にいる武田信玄に佐助は今の状況を伝えた。
信玄は腕を組んで考える。

「…宇都宮と小田原を取られたか」

少し苦労をすると言うような雰囲気はその言葉で分った。
信玄が少し悩んでいた所に、後ろから甲冑の音が聞こえる。

「——お館様っ!」

その甲冑の持ち主は幸村だった。
だがいつもの姿とは違い、右腕と頭に包帯が巻かれている。
昨日、政宗にボロ負けしたからだ。
その幸村は信玄に言う。

「この世は大阪を攻める他ございますまいっ!」

信玄は黙って聞いた。
確かに、幸村の言う事は正しい。
元々豊臣は大阪城を拠点としている。
少し豆知識だが、昔の大阪城は「大阪夏の陣」と言う戦で崩された。
今の大阪城は勝利した徳川家康が改築した物である。
それはさておき、幸村は信玄の下へ走る。

「川中島では不意を突かれましたが、我らが最強の武田騎馬軍団!万全を期して望みさえいたせば、十分に勝機はござ」
「馬鹿者っ!」
「ぐぁぁぁっ!!」

言葉の途中で、幸村は信玄の——アッパーを食らった。
アッパーにより幸村は宙に飛ぶ。
幸村は着地に少し失敗し、少し膝を付ける。
その幸村を見た信玄は叱咤した。

「旧宇都宮・北条領を奪われた今、迂闊に甲斐を動かせばどうなるかたやすく察せられよっ!」
「な、なればこそ…——豊臣が油断している所をっ!」

幸村は走るが、信玄のカウンターを食らいまた飛ぶ。
信玄は真剣な顔で言う。

「それこそが豊臣の思う壺!みすみすならば、破滅を招くであろう!」
「では、ただ座して豊臣に攻められるのを待てと申されるのですか!」

幸村は一瞬にして包帯を取り、信玄の前まで拳を溜めて跳んだ。
だが………———。

「逸るのではないわっ!!」
「でぁぁぁぁっ!!」

信玄の強い拳がクリニカルヒットし、幸村は飛ぶのだが今度はスピンがかかって飛んだ。
もちろん幸村は着地が出来ない為、そのまま地面に倒れる。
幸村の周りには土埃が舞った。
信玄は静かに言う。

「幸村よ、貴様の心中は察しておる。独眼竜に不覚を取り、また豊臣の出現が無ければ彼奴に完全なる敗北を期していたであろう事。二重の屈辱であろう」

幸村は立ち上がり、息を吐く。
信玄の言う事は幸村の心を大いに知っていた。
幸村が感じていた事を言われて少し——悔やんだ。
幸村は少し落ち着いた後、信玄の下へ行き土下座の座りをする。

「申し訳ございませぬ、お館様。某、挽回とさらなる精進の場を求めるあまり…」
「…その心をまず抑えるこそが魁皇。一度死んでいた筈の身ならなおの事、半網を捨てしかと目を見開くが良い」
「——っ!心得ましてございますっ!」

信玄の言葉に幸村は今の自分にやっている事が悪方向へと行くと分った。
信玄に頭を下げる。
信玄は、佐助の方を見て言った。

「西の方はどうじゃ、佐助」
「亜紀の毛利と豊臣方が接触を重ねているそうです」
「うむ…同盟か」
「…おそらく」

佐助は確信していないが、そう返し続ける。

「包囲状態となって、身動きが取り難い毛利と手っ取り早く勢力を広げる豊臣の利害は一致する。…毛利としてはそろそろ四国の長曾我部と主要を決したいと所でもあるでしょうし」

佐助の報告にて信玄は少し考える。

「…と、なれば」

信玄が言おうとした途中、幸村は叫ぶ。

「——やはり、大阪を攻め落とす以外はございませぬっ!」
「戯けがっ!」
「おわぁぁぁっ!!」

考えが進まない馬鹿な幸村は、また殴られる。
しかも、飛ぶのはさっきとは違い青い空の果ての近くまで飛んだ。
今度は着地を成功しまた走る。

「何故狭い視野しか物を見ぬ!この時点で既に豊臣に敗北しておるぞ!」

信玄はグッと拳を作り構えた。
幸村は走って叫ぶ。

「毛利領と統合いたせば、早豊臣の諸号は——日の本の半分に達しますぞっ!」

幸村は信玄に向かって飛びげざり。
だが、信玄はそれを防いだ。

「うぬぅ…ぬ!」

防いで間が空いた後、すぐに幸村の足を取る。

「馬鹿者がっ!所詮は、今の半分に過ぎぬのだっ!」
「ぐぁぁぁっ!」

信玄は幸村を振り回し飛ばす。
幸村は青い空の果てに飛んでいった。
一旦キラリと星になるが、幸村は知って信玄の下へヘナへナと行く。

「貴様は先だっての敗走から何も得ておらん。囲まれた中で活路が見出せぬ時はなんとする?」

息を吐いて正座した後、幸村は答える。

「囲いの…外へ…?」
「うむ、西へ向かうのじゃ」
「——なっ、西とは瀬戸内…。いや、さらに西へでございますか?」
「うむ、未だ九州は豊臣の手には落ちておらん。最南端の薩摩にその侵略を阻む勢力があると聞く」
「なんと…っ!」

幸村は初めて聞いて驚いた。
普通なら簡単に豊臣に落ちるのだが——その豊臣を阻むなどありえなかった。

「わしの名代として薩摩に赴き、その者達と九州の地を守り、然る後に西から豊臣・毛利を攻めよ」

幸村はその言葉を聞いて元気になった。

「お館様っ!我らを囲んでいると思う豊臣を、逆にはさみ打つのでございますね!」
「事が成るまでわしは甲斐を動かぬ。全てはお前の働き次第」
「お館様っ!この幸村、必ず答えて見せまするっ!」

信玄は幸村の姿を見て頷いた。
幸村は自分自身の心を燃やす。

「さして、痛まなき事も忘れるではないぞ」
「はっ、心得ておりまする!!」
「幸村っ!」
「お館様っ!」
「幸村っ!」
「お館様ぁっ!」
「幸村ぁっ!」

いつもの恒例、信玄と幸村の語り愛が始まった。
佐助は耳栓をするように、指を入れて見ないふりをした。