二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 黒執事−knightmare Of a Devil− ( No.11 )
- 日時: 2010/07/23 15:03
- 名前: 泡沫 ゆあ (ID: 7rIzYjoN)
第四話;その執事、戦慄
「では、我が社のブルーベリーのゼリーを採用していただくということでよろしいですか?」
「ああ。こちらも、パッケージにビターラビットを掲載させていただくということで?」
小一時間ほど、お互いの利益につながるように商談をしていた。
見た目からは想像できないような速さで頭が回る(回転するわけじゃないが)フィオリア。
シエルは驚きながらも、動揺を見せないように振る舞っていた。
「・・・・そういえば伯爵、ご存知ですか?」
ふと思い出したかのように声をあげるフィオリアに、シエルは一瞬肩を揺らせた。
「何を、でしょうか」
セバスチャンは纏まった提案書を整理しているため、リビングには居なかった。
「あ、敬語はやめていただけませんか?同い年なのですし、楽な話し方の方がよろしいでしょう?」
「・・・・ぁ、ああ。ならそうさせてもらおうか」
両手を顎のラインに沿わせて首を傾けるフィオリアに、シエルはすんなりとお願いを聞き入れる。
「で、僕が何を知っているって?」
出された紅茶に口をつけながらそう尋ねると、フィオリアは満面の笑みで答えた。
「最近世を騒がせていた、ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)のことです」
その言葉に、シエルは目を見開いた。
「・・・・・知っている。あれだけ大きく取り上げられていたんだ。
知らない奴の気がしれない」
言いながらも、シエルの手は少しだけ震えていた。
「勿論。<表>で取り上げられているソレのことなら、英国民なら誰でも知っているでしょう?
・・・私が申し上げているのは、<裏>で知られているソレのことですわ」
輝かしい笑顔を放つフィオリアから、動揺して視線を逸らせないシエル。
フィオリアは、正面に座っているシエルの横に近づきそっと手を握る。
その一連の動作に驚いたシエルは、ビクリ、と手を震わせてしまった。
「・・・・・・噂、あくまで噂ですけれど」
フィオリアの声が、シエルの耳に、脳に染み込んでいく。
「ジャック・ザ・リッパーの正体は、伯爵の叔母であるマダム・レ「そこまでにしていただけますか?」
フィオリアが最後まで言うのを待たずに、後ろから威圧のある声が降り注ぐ。
「・・・・・・あら、セバスチャン。もう整理が終わったの?早かったわね」
にこり。と変わることの無い笑顔を向けるフィオリアに、セバスチャンも笑顔で返す。
「はい。それに、早く済まさなければフィオリア様に坊ちゃんが虐められてしまうと思いまして」
口元は笑っているが、瞳は冷徹なまでにフィオリアを見下ろしている。
「まぁ。私が伯爵を?そんなことある筈ないじゃない。
私はただ、伯爵と仲良しになりたいだけよ?」
無邪気な笑みを見せながら、シエルの傍を離れる。
「・・・そうだとよろしいのですが」
セバスチャンは、胸元から懐中時計を取り出す。
「申し訳ございません。生憎、坊ちゃんには予定が詰まっておりまして。
この後も秒刻みで予定をこなして頂かねばなりませんので失礼します」
さ、坊ちゃん。とセバスチャンがシエルの手を引く。
よろりと立ち上がりながらも、シエルはフィオリアに軽く会釈をし、部屋を出ようとする。
「それは大変ですわ。セレスティ!伯爵がお帰りになるの、お見送りをお願い」
そう一声かけると、奥の書斎からセレスティが現れた。
「・・・畏まりました、お嬢様」
「本日はどうも有難うございました。こんなにも坊ちゃんを疲労困憊させていただいて。
嫌がらせとしか思えない待遇、素晴らしいと思いますよ」
セバスチャンの棘・・・・・よりももっと鋭い、ナイフのような言葉がセレスティに浴びせられる。
「・・・・・・・・・」
しかし、罵声を浴びせられても何一つ反応しないセレスティに、セバスチャンはため息を吐く。
「・・・・相変わらずですね、セリー。その憎しみを堪えたような顔、久しぶりですよ」
「・・・・・・・・黙れセバスチャン」
お互いを知った風に言う二人の執事。
その関係の間にあるのは、果たして何なのだろうか・・・・・。