二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 黒執事−knightmare Of a Devil− ( No.2 )
- 日時: 2010/07/19 23:04
- 名前: 泡沫 ゆあ (ID: h9T9UkU2)
第一話;その執事、怪異
「・・・うさま。お嬢様」
朝、窓から燦々と降り注いでくる日の光と、凛とした声が部屋に満ちる。
光と声に揺すられた人物は、目蓋を震わせゆっくりと瞳を露にする。
「・・・・ん・・・?」
「おはようございます、お嬢様。
朝食の準備が整いましたので、お召し替えを」
寝台から起き上がる一人の少女と、洋服を差し出す一人の女性。
少女は寝ぼけているのか、女性の顔を見るなり洋服には見向きもせずに抱きつく。
「・・・・お嬢様、お召し替えを」
一瞬目を見開いたが、すっと息を吸い少女に問いかける。
「・・・ふふ。暖かい」
少女は女性の髪を撫でながら、肩に額を乗せて笑う。
「私の体は夜風のように冷たいのに、貴方の体はどうしてこんなに暖かいのかしら」
クスクス。と笑いながら更に女性に抱きつく。
「ご冗談を。お嬢様は雪を溶かすような優しい温もりがございます。
・・・朝食が冷めてしまいますので、お召し替えをどうぞ」
病的に白い肌をした少女を気にしてか、女性は失礼します。と頭を下げ、少女の首元に手をやる。
慣れた手つきで少女の寝巻きを洋服へと着せ替えていく。
「・・・今日の服も、可愛いわ」
「勿論です。お嬢様に喜んでいただくために、フランスから取り寄せました」
「フランスから?素敵・・・・・。
なら今日の朝食はフランスパンかしら?」
冗談交じりに言ってみると、女性はフイっとそっぽを向く。
「・・・・・・ごめんなさい、当たってた?」
少女は少し眉を下げて軽く謝罪する。
「いえ、お嬢様が謝られる必要はございません。
ただ先日<フランスパン>を食べてみたいと申されていたので・・・・・」
少し顔を赤くした女性に、少女は笑う。
「覚えていてくれたのね?嬉しい・・・」
着替えが終わった少女は女性に抱きつく。
「・・・・・シエル・ファントムハイヴについて、何かわかったかしら」
少しトーンを下げて問いかける。
「・・・そちらについてはまだです。しかし、情報によればマダム・レッドがお亡くなりに・・・」
そこまで言うと、少女がクスクス笑い始める。
「そう、そうなの。ならもうすぐね。もうすぐファントムハイヴ伯爵に会えるのね」
楽しみ。と洩らす少女に女性は少し眉を寄せる。
「貴方も楽しみでしょう?セバスチャンに会えるのよ?」
少女がそう言うと、女性は静かに目を閉じ口を開く。
「ええ、とても楽しみです。・・・・会ってすぐに殺してしまいたいくらいに」
少女の笑い声は部屋に響く。
悲劇を喜ぶ悪夢のように・・・・。