二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 黒執事−knightmare Of a Devil− ( No.28 )
- 日時: 2010/07/26 19:56
- 名前: 泡沫 ゆあ (ID: h9T9UkU2)
第十話;その執事、深淵
「ふーーーーーん?フィオっていうのね、その子。
<こっち>の世界じゃ有名なんだけどね?最近迷惑してるのヨ」
んもう!と頬を膨らませてプンスカ言っているグレル。
「・・・フィオリア様がどうかされたのですか?」
セバスチャンから話しかけられたのが嬉しかったのか、キラッと目を輝かせる。
「そうなのヨ!!この子、回収リストにあった魂を全部横から持って行っちゃうのよ!!!!
お陰でウィルに怒られるし、死神の鎌も返してもらえないしもう散々・・・・」
悲劇だわ!!と顔を俯けシクシク言うグレル。
お前が来た時点で悲劇だ。とシエルに突っ込まれ、グレルは更に凹む。
「フィオが・・・・人間の魂を奪うだと?」
「一年前くらいから急になのヨ。アタシ達が回収しに行ったときにはもう手遅れ。
血塗れのあの子と怖いくらいに汚れていない黒い女執事が魂を持って行っちゃうの」
「一年前・・・・・」
フィオリアの両親が亡くなり、シェリーヒューストン家当主になった頃と同じ。
「・・・・何かある。セバスチャン」
シエルに呼ばれ、セバスチャンは視線を向ける。
「フィオリア・シェリーヒューストンを調べろ」
「イエス・マイロード」
女王の番犬は、新たな獲物を見つけた。
「・・・・・・・セレスティ」
フィオリアは気だるげにセレスティを呼ぶ。
「何でしょうか、お嬢様」
寝台にうつ伏せで寝そべっているフィオリアの手を握る。
「・・・・もうすぐ、伯爵に会えるわ。もうすぐよ。
あんな生温い会場じゃなくて、<舞台>で、会えるのよ・・・・・・」
ふふふ。と笑うフィオリア。
枕に顔を埋めているので、表情は伺えない。
「貴方は、私の<最期>を看取ってくれるんでしょう?」
「勿論です、それが私との<契約>ですから」
「・・・・優しいわね、セレスティは」
握られた手をそっと握り返すフィオリア。
「・・・・・・・・寒いわ・・・・・・・・・」
暗闇に落とされたかのように、フィオリアの声は何処までも深く沈んで行った。