二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 黒執事−knightmare Of a Devil− ( No.5 )
- 日時: 2010/07/20 20:26
- 名前: 泡沫 ゆあ (ID: h9T9UkU2)
第二話;その執事、対面
「おはようございます、坊ちゃん」
「ん」
豪華な品々に囲まれたその部屋に、恭しい声とそっけない声とが交じり合う。
「・・・・昨夜は随分と魘されていたようですので、アッサムにミルクをたっぷり注いだ
ミルクティーをご用意いたしました」
黒髪に真紅の瞳をもった執事、セバスチャンはカップに紅茶を注ぐ。
「・・・そんなことはない」
蒼がかかった黒髪に、青と緑が交じり合った瞳をもった主人、シエルはカップを受け取った。
「マダムの死からもう一週間が経ちましたが・・・・まだ立ち直ることができないのですか?」
くすり、と含み笑いを洩らすセバスチャンをジロリと睨み付けるシエル。
「・・・僕を馬鹿にしているのか?セバスチャン。
前にも言った筈だ。僕は迷わない。立ち止まらない。
踏み出した一歩に後悔もしない。
・・・・・お前も、それを受諾しただろう」
カップに注がれた紅茶の、最後の一滴を飲み干し真っ直ぐにセバスチャンを射抜く。
「・・・・そうでしたね、申し訳ございませんでした」
そういって、セバスチャンはシエルの服を着替えさせていく。
「坊ちゃん、本日の予定は午後三時よりシェリーヒューストン邸にて商談がございます」
「・・・・シェリーヒューストン?聞かない名だな」
セバスチャンから手渡された書類に目を通しながら、耳だけを傾けるシエル。
「はい。ここ一年で急激に成長した菓子会社で、当主は坊ちゃんと同じ一二歳だとか」
「・・・シェリーヒューストンの両親は・・・・」
「書類をご覧の通り、一年前にお亡くなりになっています」
セバスチャンとシエルの視線がぶつかり合う。
「・・・・すぐに支度をしろ、セバスチャン」
コートと杖を掴み、急ぎながらも音を立てずに扉を開く。
「イエス・マイロード」
セバスチャンも、それに続くのであった。
「・・・・・・・ここがシェリーヒューストン邸か」
馬車を降りたその先には美しい屋敷があった。
優雅で気取らないその趣き(おもむき)は、人柄の良さを物語るかのようだ。
「まぁ。約束の時間丁度に来て頂けるなんて」
嬉しい限りですわ。と、鈴を転がしたかのような可愛らしい声が前方から聞こえてきた。
視線を向けてみると、屋敷の玄関に一人の少女が立っていた。
紫がかかった長い髪を左右に少しだけ結い、残りの髪は麗しく下ろしていて。
ロイヤルパープルの美しい瞳をキラキラと輝かせている。
「お初にお目にかかります。私、フィオリア・シェリーヒューストンと申します、どうぞ良しなに」
太陽のような笑顔に、一瞬だけ、シエルは思考を奪われてしまった。