二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒執事  悪魔の悪夢 名前キリンに変えたよ! ( No.90 )
日時: 2011/01/12 21:42
名前: キリン (ID: ucEvqIip)

第二九話;その執事、水泳


「こちらが、魚宮様の屋敷でございます」
「・・・・ずいぶんと大きいな」
「人間のくせに・・・・贅沢」
「では、誠一郎様にお話をお入れしてきます。
 この部屋でお待ちください」

そう言って、水姫は足取り軽く部屋を出て行った。

「・・・・・あの女・・・」
「?セリー、どうしましたか?」

セレスティは水姫を見て疑問の声を上げた。


「あ、いえ。大したことではないのですが・・・・・。
 着物の袖であまり目立たないのですが、腕に包帯をしていました」
「包帯、か・・・・だが何故そんなことが気になる?」
「英国と同じなら、家女の仕事は家事全般です。
 ですからあのようなところに包帯を巻くほどの怪我はできないはずなんです。
 ・・・・どこかで転んだのでしょうか・・・」


セレスティは首を傾げた。
シエルも気になったが、まあ気に留めておこう。
という感覚で、さほど大きくは考えなかった。


「シエル様、お待たせしました。誠一郎様の元へご案内します」




「はじめまして、シエル様。私が魚宮 誠一郎です」

好青年、という言葉がとてもよく似合う。
水姫よりすこし濃い栗色の髪に爽やかな笑顔。
なるほど。人はよさそうだ。

「あ、水姫。そろそろ交代の時間だろう。
 花耶かやにも言ってあるから代わってくるといい」
「ありがとうございます、誠一郎様。
 それではシエル様、失礼いたします」

深々と頭を下げ、水姫は部屋を出て行った。


「それで、ご用件は何でしょう?」
「急に押しかけて申し訳ない。旅行に来たのだが宿が手違いで取れなかったんだ。
 この辺りの者の話では貴方の家が大きく、お心遣いも慣用であると聞いた。
 できれば一週間ほど泊めてもらいたいんだが・・・」

苦しいか?
シエルがそう思っていると。

「それはさぞお困りでしょう。
 我が家でよければどうぞお泊まりください!」

あっさりOKが出た。

「そうだ、旅行と仰っていましたよね。
 どうでしょう。我が家のすぐ前に湖がありましたでしょう?
 そこで泳がれては」
「お気持ちはうれしいんですが我々は「じゃあお言葉に甘える」え?」

セバスチャンが当たり障りなく答えようとすると、ハニーが邪魔をした。

『おい、どういうつもりだ!』
『私最近残業続き、疲れた。リフレッシュにはもってこい・・・・でしょ』


「では楽しんできてください!」

誠一郎の爽やかな笑顔に、今更断ることもできないのであった。




「・・・・・いい景色だな」
「そうですね、またの機会には水着を持ってきましょうか」
「水が綺麗ですね、自然のままみたいだ・・・・」
「・・・・・・・・魚、おいしそう・・・・・・・・」

ボートを浮かべて、シエル達は和んでいた。
水着がないので泳ぐことはできないが、これはこれでいいものだ。

「・・・ん?」
「どうしましたか?シエル様」
「いや・・・底のほうで何か光ったような・・・・」

シエルがボートから顔を覗かせた。


「っ!!!」
「坊ちゃん!!!!!」


ボートの縁に着いていた手を滑らせて、シエルは湖に落ちてしまった。

「シエル様!!!セバス兄様、シエル様が!!!」
「全く、本当に世話の焼ける人ですねっ!!」




暗い水の中、シエルの体は沈んでいく。
上に上がろうともがくが、足に水草が絡まっていた。

『息が、できなっ・・・・・』


薄れゆく意識の中、誰かが囁いたような気がした。

・・・・カ、シ・・・・・・マ


浮かび上がる感覚の中、最後に見たのはセバスチャンだった。




「・・・ちゃん、坊ちゃん、しっかりしてください」
「・・・っ、ごほっ、っはぁ・・・・・せばす、ちゃん?」

全く、貴方という人は・・・・と呆れた顔をしたセバスチャン。
その横で涙目になったセレスティと興味なさげにこっちを見ているハニーが居た。


「・・・セバスチャン、お前、水の中で僕に話しかけたか?」
「?まさか。そんな余裕はありませんでした」

シエルはすこし戸惑いながらも、セバスチャンたちに言った。


「・・・・女、がいた気がするんだ。足に絡まっていた水草を取ってくれた。
 よく覚えていないんだが・・・・・・・・」


その言葉に、セバスチャンはくすりと笑った。
「そうですか、女性が・・・・・」

全てを悟ったような顔で、セバスチャンは湖を眺めていた。