二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒執事  ‐Knightmare Of a Devil‐  ( No.94 )
日時: 2011/02/10 16:04
名前: キリン (ID: ucEvqIip)

第三十話;その執事、人魚

「・・・・本当に、お前の言ったとおりなのか」
「恐らくは。ただ一つ気になるのは、あの方の正体ですが・・・」
「?あの方がそうならもう関係ないんじゃ・・・・」
「女害虫馬鹿。共犯、ってこともあるでしょ」

ひそひそと小声で話すシエル一行。
場所は誠一郎の屋敷からすこし離れた川。
辺りも暗く、静かで不気味だ。
セバスチャンの推測通りなら、もうすぐ・・・・・・。

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!」

叫び声が聞こえてきた。

「っ!!こいつは・・・・・・・・・・・・・・」

川の近くまで行ってみると、一人の男が倒れていた。
見覚えがあるその男は、誠一郎の父親であった。
既に、息は無い。
その男のすぐ後ろに、人影が見えた。
水に浸かっているのか、上半身までしか見えない。


「・・・・・やはり、今までの事件の犯人はお前だったのか」


月が雲から顔を出し、その人物を明るく映し出す。
その人物は・・・・・・・。


「魚宮家の侍女、水姫・・・・・・・・・」
「・・・・どうして私だと、思ったのですか」


水に濡れている水姫。
その瞳には、光を反射した水面がゆらゆらと揺れ映っている。



「確信は無かった。だが、被害者の全員がお前に送迎されていた・・・・・。
 それにその腕の大きな包帯。被害者ともみ合ってできた怪我なんじゃないのか?」


そこまで聞くと、水姫は参ったとでも言いたげな顔をして笑った。


「はい。ご明察のとおりでございます。私が皆様をお送りしている途中に殺しました」
「・・・・・・・・・一体何故そんなことを・・・」
「必要だったからです。魚宮現頭首様も、ここにある川や、湖を埋め立てようとなされました。
 ・・・・・この土地の水を汚すことは許さない、だから殺す必要があったのです」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・それに、セバスチャン様はもう、私の正体などわかっておられるのでしょう?」


水姫は平然と言って見せた。
セバスチャンは、ふっと笑い言葉をつむいだ。


「水姫様、貴方は古来から日本に伝わる水の妖怪・・・・・・人魚ですね」
「・・・・・・・ご名答です」


水姫は笑った。


「湖で僕を助けたのも、お前なのか?」
「・・・まさかあそこにシエル様がいらっしゃるとは思いませんでした。
 そして水の中にまで入ってくるなんて・・・・・私を探っておられたのですね。
 わかっていましたが、見捨てることはできませんでした」


『勘違いしてるのか?!僕は気づいてなど・・・』
『いいじゃないですか、間抜けな姿は気づかれていませんよ』
『一言多いんだお前は!!』


水面から紫色の尾びれが現れた。
・・・・・そう言えば、髪も瞳も紫色に染まっている。


「・・・それがお前の本当の姿か?」
「はい、人間らしく振舞うには、この姿は不便でしたので・・・・」

ゆらりと動く尾びれを、するりと撫で上げる水姫。


「もうよろしいでしょう?シエル様。自警団に私を「待ってください!」」

水姫が言い切る前に、一つの声が邪魔をした。その声の正体は・・・。


「魚宮、誠一郎・・・・・・」
「彼女を連れて行くのなら、私も一緒に・・・・」
「?どういうこと・・・・?」
「誠一郎様!!!」

皆が疑問を浮かべる中、水姫は叫ぶ。が、誠一郎は止まらない。


「彼女に殺人を頼んだのは、私です」


誠一郎の言葉に、水姫はそっと、瞼を閉じた。