二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒執事  ‐Knightmare Of a Devil‐  ( No.95 )
日時: 2011/02/11 17:17
名前: キリン (ID: 7rIzYjoN)

第三一話;その執事、帰葬


「どういうことだ、殺しの犯人は水姫じゃないのか?」
「・・・・そう言えば、ハニー様からの依頼は、<魚宮 誠一郎>の
 殺害・・・・・でしたね」
「彼が・・・・・・・・・・・人間じゃない・・・?」
「・・・・・・」


「ええ。人間ではありません。正確には人間で<なくなった>のです」


誠一郎の言葉に、シエルは驚愕した。


「私は・・・八尾比丘尼やおびくにです」


「やお、びくに・・・・・」
「妖怪、と言ってよろしいのでしょうか。
 特異体なので詳細は分かりませんが、人魚の肉を食べ、
 不老不死の体を手に入れた者のことを、そう呼んでいるそうです」

「セバスチャン様は良く御存じでいらっしゃる。その通りです」
「人魚の肉・・・ということは、水姫の肉か・・・・・」
「はい。私の肉でござます」
「じゃあその腕の傷は・・・・・誠一郎に肉を渡した傷・・・?」


そういうと、水姫も誠一郎も笑った。


「私が水姫の正体に気がついたのは、ちょうど一カ月ほど前です。
 商談相手を送りに行ってなかなか水姫が帰ってこなかったので
 見に行って、そこで水姫の姿を見ました」
「誠一郎様に見られたことで、私はも駄目だと思いました・・・・でも、言ってくれたんです。
 『私も、水姫の力になりたい』って・・・・・・。
 誠一郎様は、望んで八尾比丘尼と化してくれたのです」
「それからも彼女に殺人を頼みました。
 発見されてはいませんが、他にも、私は何人も殺してきました。
 ・・・・全ては、ここの水を守るために・・・・・」


ああ、似ている。
シエルはそう思った。
何かのために必死になっている姿は、自分にそっくりだ。
目的のためなら、手段さえも選ばない。
彼らも、同じなのだと・・・・・。


「・・・・もういい、わかった・・・・・・・・」
「・・・坊ちゃん?・・・・・・」
「シエル様・・・?」

シエルの言葉にセバスチャン達や誠一郎達が戸惑う。


「お前達のしたことは、正しいことじゃない。
 だが、悪に堕ちてでも、貫き通したその信念は認めよう。
 ・・・・だからもう二度と・・・・・」


するな。と。そう続くはずだった。


「っ・・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・・・・・・」
「!!!!!誠一郎様っっ!!!!!!」


誠一郎の体を、銀色の刃が貫いた。



「・・・・・ハニーっ!!!お前・・・っ」
「言ったでしょ。<邪魔な人間を殺して>って。
 情に流されるなんて、なんて愚かなの・・・シエル・ファントムハイヴ。」


無感情にそう言って、誠一郎に刺したままだった刃をひきぬいた。
まだ鮮やかな赤が、滴り落ちていく。


「っ・・・せい、い、ちろ・・・さ、ま・・・・・・」

水姫は陸に上がることが出来ずに、ただ涙を流し続けている。
そんな彼女を、ハニーは冷たい眼差しで見つめた。

「・・・・貴方に用は無い。私の目の前から、消えて」
「っっ・・・・・・・・・・・・・・・・」


そう言われて、涙を流しながら、水の中に消えていった。


「依頼は遂行された。取り敢えず、お礼だけは言っとく」


それだけ言って、星の輝く夜空に飛び立っていった。





「・・・・水姫様、あれからどこへ行かれたのでしょうね・・・・・・・・」
「さあ・・・・どこに行かれたのでしょうね」
「・・・・・・・・・」

英国へ帰る船の上、三人は部屋の窓から海を眺めていた。
すると。


「・・・・あぁ!!!」

セレスティの声にシエルとセバスチャンが反応する。
セレスティの指さす方には・・・・・。


「・・・・・・そうか、海に還ったんだな・・・」


海の中に、紫色に輝く尾びれを見つけたのであった。
彼女の行く末が幸せであることを願いながら・・・・。